Fire

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 アルバム『LA、LA、LA』に収録されている曲。シングルで出ていないのでファンでない人は知らない人の方が多いと思うが、如何にも摩季らしい曲の一つで、一人で聞くより、カラオケやコンサートなどで大勢と楽しむのにいい曲である。ファンの間では人気が高いようで、8thアルバム『MAKI OHGURO BEST OF BEST』において、ライブ・バージョンが収録された。
 歌詞の要諦は社会に対する不安・不服を示しながらそれに絶望して生きるよりは恋人とのささやかな一時を大切に強く生きていこうとする姿勢である。
 「そう言えば神戸の街を忘れちゃいないかなぁ」という歌詞が時代背景を感じさせてくれる。阪神大震災はダンエモンにとって決して他人事ではない。幸い、阪神地方在住の友人・知人に死者は一人もいなかったが、多くの人間の安否を気遣ったことや一人一人の無事を確認した際の安堵は昨日のことの様に覚えている。それだけに「この前行ったらもう早 宛名が違ってた。」の歌詞には心底、この社会の熱し易く冷め易い一面を痛感せずにいられなかった。
 それ以外にも陰湿化・悪質化する社会に対して能書きばかりたれて行動に起こさない御偉い様方に対する痛烈な批判も感じられ、そんな時だからこそ、側にいる人を大切にしたい気持ちがひしひしと感じられる。
 聞けば聞くほど上記のことが感じずにいられない一曲だが、惜しむらくは曲ののりのよさの前に、真意が伝わりきらない時がないだろうかと考えさせられる。ロック風の激しさとのりのよさに社会に対する重大な問題提起が共存する曲なので、どちらを受け止めるかがまたこの曲を聞く楽しみを分けるといえるだろう。

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