Return　To　My　Love

解説　アルバム『永遠の夢に向かって』に収録されたこの曲はアルバム『BACK BEATs#1』にも収録されている。歌詞的には別れをきっかけに心を閉ざす流れなのだが、その根底にに元彼を思いやる気持ちが強く、力強さと前向きな姿勢に溢れた不思議な曲である。
　個人的に注目するのは「愛したその声で　過去を悔やまないで　惨めだから　わざと冷たい　さよなら　無駄にしないで」という歌詞である。タイトルが「Return　To　My　Love」、つまり、「我が愛に帰れ」というわけだが、その心は決して独り善がりなものではない。
　どうあがいても戻れない過去より大切な未来の為に現在をきっぱり断ち切る勇気が裏打ちされている。冷たくふられた彼も辛かっただろうが、ふった主人公も辛かっただろう。事情がわからない分、ふられた側のダメージの方が大きいだろうけど、その分未練を残さずにも済むだろう。事情を知る側こそ、その引きずる思いを癒す為に「失って気付くから　愛は美しく優しくなる　今はそう思う　思いたい　扉を閉めて　Return　To　My　Love」という思いが表れるのだろう。
　この歌を聴いていて一つ残念なのが、より戻しの余地のなさである。敢えて冷たいふり方をしたのも相手を想えばこそであり、ふられた側もその手口は稚拙とはいえ、なりふり構わず、復縁を願う気持ちは強い。が、結局は主人公は原点である「My Love」への帰還(Return)を選んだ…。双方に相手を想う気持ちが残っているだけに残念である。
　この曲は「チョット」、「別れましょう私から　消えましょうあなたから」と続けて聴くとその好対照ぶりが楽しめる。「チョット」には冷たいふり方ができず、未練を残す彼氏に対する恨み言があり、「別れましょう私から　消えましょうあなたから」には優柔不断でだらだらした冷めた恋愛を断ち切る決意があり、「Return　To　My　Love」では既に未練を断ち切る為に敢えて行った冷たい別れがある。
　別れを基点に、未来に対して前向きになる為の様々の葛藤が微妙に異なった視点で歌われている。『BACK BEATs#1』をお持ちの方は、3、5、8の順でこの三曲を聞くことをお勧めしたい。
　この文章を書いていて、改めて、今更ながら摩季ソングの奥深さを思い知ったものである。