SLOW DOWN

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし


解説 17枚目のシングル、「空」のC/W曲である。冷めてしまった恋人同士の愛を歌った、どこかもの悲しい歌である。
 冷めてしまった相手に対する思いを歌っている点では、代表的摩季ソングである「別れましょう私から 消えましょうあなたから」と同じだが、この「SLOW DOWN」の場合、今一歩決断し切れずにいる。
 「別れましょう私から 消えましょうあなたから」では、既に愛情を失っている彼氏の為に辛い思いを断ち切って敢えて自ら去ろうとしているわけだが、この「SLOW DOWN」では冷めた愛に辛さを感じつつも、弱い男を見捨てられずにいる。「女ってホント馬鹿ね それでも信じて 諦めて許して間違えて」と歌っているように、歌詞の各所に男を捨ててしまいたい気持ちを歌いつつも見捨てられずにいる気持ちがよく現れているといえるだろう。

 さて、この歌の歌詞でダンエモンが注目したい歌詞は、「こんなの愛じゃない」「こんなのわたしじゃない」である。
 摩季ソングによくある傾向だが、自分が自分でいることの大切さが根底にあるから上辺だけ楽しそうでも何の意味もない事、フリだけしていても何にもならないことを声高に歌っているわけだが、自分の惨めさや人生の敗北を認めたくないばかりに満足したフリをしている人間、妥協と相互理解を取り違えている人、強がって生きている人は世の中に多く、我々もまた例外とは云い切れない。
 そんな精神の無理や演技やメッキは歪みを生じて化けの皮が剥がれた時に様々な問題を人間関係において生じることがある。ある程度は止むを得ないにしても、心だけは正直に、常に自分というものを持って、少しでも本音を貫いて生きることをこの歌は気付かせてくれる気がする。
 少なくとも「甘く浅い夢しか追いかけられない 臆病で可愛そうな人」でいたくはない。

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令和四(2022)年六月六日 最終更新