Summer Breeze
解説 前曲「あなたがいればそれだけでよかった」の続編っぽく感じてしまうのは私だけだろうか?アルバム『LA、LA、LA』の6番目に収録された曲で、直訳すると「夏の風」である。
歌詞をストーリーとして追うと、別れた筈の男との一時の再会に、改めて終わった恋を清算し、新たなる人生のスタートを切らんとしている一方で、今まさに完全に終わらんとしている恋に時を止めて身を沈めたがっている、そんな切なさが感じられる。
だが、そんな考えが間違っていて、このままじゃ行けないからこそ、男に会ったのは女自身が百も承知であり、過去に留まりたい心と、新たな前進を求める心に揺れる姿を綴った歌詞が秀逸である。
ストーリー的に、別れてから多少の時間が経っていることが覗え、「あなたがいればそれだけでよかった」の続編であると考えさせられてしまう。前曲が「濡れた歩道」、本曲が「Summer」、と言う歌詞を含むことから、梅雨時に別れて、夏に再会したのではと思ってしまう。曲のテンポが全然違うのにである。ま、別にそれは大した問題とは思わないが、もし予想通りならなんとなく嬉しい。
もう一つの着眼点は男の態度である。「傷ついた女には誰でも優しい」と、初めは男の優しさを信じられなさそうにも聞こえるが、「どうして帰らないの?」という歌詞が、優しさが嬉しくあり、その優しさに後ろ髪引かれており、男との対応にも揺れる心が秀逸に綴られている。
最後に注目しておきたいのは「心が枯れる前にあなたに会えてよかった」という歌詞である。別れた恋人と会うのは、(どちらがふったにせよ)辛さが伴うのだろう、それでも会わなければ「心が枯れる」としたのである。
別れに辛さは付き物だが、同じ別れなら、再会を素直に喜べる別れにしたいと考えさせられる歌詞である(そうことが簡単に運べば最初から別れやせんとは思うが…)。
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