Time&Time~時の女神~

Time&Time~時の女神~

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 アルバム『STOP MOTION』の4曲目に収録。摩季ソングが世に出た順を考えると、この曲より葉山たけし氏による編曲が始まり、以後大半の曲の編曲を葉山氏が務めていることがわかる。
 この歌を初めて聴いたとき、ダンエモンはこの曲は何かアニメのオープニングかエンディング用に作られた曲かと思った。身も蓋もない言い方をすると、それだけ歌詞の意味のをつかみかねている、未だに。雰囲気としては豊かな母性と、世界を見据えた雄大さを「母なる女神達」「『黒い海』」「芽生えた命を」「世界を産み育てる鍵」、といった歌詞から感じ、何かを大きな視野で比喩しようとしていることは感じられるのだが、それ以上の理解ができない。
 歌詞に並んで、曲にも雄大な感じは感じられるのだが、如何せんダンエモンは歌に歌詞で惚れる男である。恐らくこの曲だけでは摩季ファンにはなり得なかったと思う。アニメソングでもなく、シングル曲でもなく、何かのイベントのテーマソングでもないこの歌が何故にここまで抽象的なのか?まだまだ摩季ソングへの研究はその果てが見えない(見えてたまるか、という気もする)。
 ない知恵を絞って歌詞を見渡して注目したい歌詞が「抱き締められて 流されて 芽生えた命を 生み出す 鎖すも 女の 心のまま」である。冒頭からこの部分に至るまでの歌詞には刹那的なものに対する失望の中で、女の在り様を歌っていたのだが(そう受け止めたのだが、何分歌詞が抽象的で自信が持てない…)、この歌詞で、生命の起源が母なる女性に在り、その育て様が世界を握っている、ゆえに女としての在り様が重要であると歌っている(くどいが、そんな気がする)のが興味深い。まさに刹那的な物から、過去から未来への恒久的な時の流れを司る物を産み育てることこそ、タイトルにある「時の女神」の正体ではあるまいか?そしてそれは偉大なる母性と同一に感じられる。
 上記のダンエモンの解釈が的を得ているのなら、この歌はダンエモンの予想以上に雄大で、重いテーマを持っている。デビュー後僅か一ヶ月の摩季が作ったこの歌が、プロとしてのキャリアを経て、どんな続編、または続編的な歌を作り得るか、大変興味のあるところである。

追記(2004年3月)
 この解説を始めて作ったのは2001年11月だったが、時を経ること二年四ヶ月、熱狂的な摩季ファンである道場主の知人、北海道のOdacchiさんからこの曲が湾岸戦争をテーマに作られたものであることを教えられました。
 その認識をもって改めて歌詞を見ると「世界が動き出した 淫らに 不自然な愛が造り出す 悪夢が」は政治家同志の偽善に裏打ちされた大義名分で始まる「聖戦」への皮肉であること、「熱砂漠 奪い合った オアシス 憎しみは 空を焼きこがし 続いた 残ったものは 『黒い海』」といった歌詞に戦争の愚かさ、むごさ、勝敗に関係なく人々の心に暗い影を落とすことが見事に含まれていることがわかる。
 奇しくもこの解説を書く直前に同時多発テロがあり、この追記を書く直前にイラクの大量破壊兵器を大義名分に始まったアメリカのイラク侵攻から一年を向かえた。
 「Time&Time 世界を産み育てる鍵は 揺り籠を押してく 母の手に」−これから生まれて来る命に戦争の惨禍に巻き込まれることを望んでその誕生を待つ母親が存在するだろうか?改めて人間の愚かさを思い知り、それでもダンエモンは自分自身が人間以外の何物でもないことに直面して生きていかなければならないことに非常に重いものを感じる。
 改めてこのような考えをもつ機会を、そして何より摩季ソングへの正しい認識を導いてくれたOdacchiさんに改めて厚く御礼申し上げて追記を締めたいと思います。



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