After Blue

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし


解説 15枚目のシングルCD「アンバランス」のC/W曲である。穏やかなときの中で彼氏とのまだ見ぬ未来に思いをはせ、希望と不安の中に揺らぐ姿からはこの恋が始まってまだそれほどの時間を経過していないことが推測される。
 一言で云うと「迷い」の歌である。その迷いの基は前述したように希望と不安である。ニュアンスは異なるが、新入生や新入社員の置かれた立場と似ているのかもしれない。何事も始まりは希望と不安が伴うものである。それが自分にとって大切なものとなるとその揺らぎはより大きいといえるだろう。

 ある視点から見てみるとこの歌の歌詞は大変興味深い。どんな視点かって?少々お待ち願いたい。その前に歌詞の核となっている主人公の迷いから見たいのだが、歌詞には「気まぐれな恋かもしれない 運命かもしれない」「重荷にならないように甘えるのは難しい」「ずるい男? 正直な男?今はまだわからない」といった表現でその迷いが歌われている。
 だが、「迷い」という思考を見ると、相反する二つの事象(例えば「気まぐれな恋」「運命」)の間がその舞台となるのだが、相反する二つ事象は表裏一体である場合も多く、それゆえにそのどちらかに徹するのはよほど修業を積んだ人間か単純な人間にしか出来ない。
 となると常人が取る手段は二つに限られる。

 一つは不完全覚悟でどちらかの事象に極力徹する道で、もう一つは中庸を保つ道である。
 中庸を英語で云うと「unblance」、つまりこの「After Blue」のC/W曲の「アンバランス」とは見事な対比を為している、と見るととても興味深い。これが前述の視点である。

 さて、散々迷いを見せている主人公だが、歌詞中に「本当の気持ち」という歌詞を何度か出している。つまり迷っているのは本音を語ることによって何がしかの悲劇を招くことを恐れているからであって、彼女自身の気持ちは既に決まっているのである。ここは摩季ネェらしく裸の心でぶつかって欲しいものである。もしダンエモンが主人公の恋人の立場なら、彼女が本音で語り易い環境を整えてやりたいと思うし、主人公の親友の立場なら勇気ある決断をするための一押しをしてあげたいと思う今日この頃である。

摩季の間へ戻る

令和四(2022)年六月五日 最終更新