愛する程の孤独

         作詞 椎名恵 作曲 羽場仁志 編曲 見良津健雄
解説 椎名恵さんの13thアルバム『GAMBARE』の7番目に収録。道場主の記憶に誤りがなければ16thシングル「がんばれ!」のC/W曲である。
 アルバム『GAMBARE』収録曲同志で比較するとどうも暗さが目立ってしまう(それだけ同アルバム収録曲は前向きさに溢れた素晴らしい曲が多いという事である)。どんなに恋人同志が身体的に近い距離にあっても、心に繋がりがなければ無意味であることをこの曲は教えてくれる。そして恐らくは側にいても冷めてしまった恋を終わらせようとする他の椎名ソングにもその根底は相通ずるものがあるのだろう。
 「何度も口唇重ねるけど」「どんなに近くで眠る夜も」の歌詞には明らかに主人公と「あなた」に肉体関係があり、それでありながら「切ないこの胸を埋められない」「同じ夢までは見れないから」といった空しさが残る様は人間はどこまで言っても一つにはなれないことを突きつけられている様で些か寂しい。
 特に「同じ夢までは見れないから」には「無理言うな!」と言いたくなる(苦笑)。ま、だからこそ恋することに意義があるわけだが…。
 主人公自身が、「そう、あなたには身勝手な 悩みでしょう」と言っている様にこの曲の主人公は悪く言えばワガママ者であり、別の言い方をすれば理想主義が過ぎるのであろう。だが、一つ確実に断言できる事がある。それは主人公の「あなた」への想いが半端ではなく、その想いに「あなた」は応え切れていない、という事である。その証拠に主人公は孤独を感じつつ、別れを直前で思い止まっている。主人公は歌詞にあるように「愛しすぎた」のである。
 理想が、望みが、欲望が、大きいからその想いの大きさが「あなた」のそれとの差が広がる事に寂しさを一層深めるのだろう。主人公の想いに「あなた」は幾ばくかなりともレスポンスして欲しいものである。その二人の為に、の念があれば主人公の孤独はいくらかなりとも軽減されるだろう。


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