赤い糸
解説 アルバム『PRESENTs』のラッキーセブン。いわゆる失恋の曲で、寂しい曲調がノーマルな雰囲気で続くが、歌詞の持つ含蓄は深い。一度聴いた限りでの印象は強くないが、繰り返し聴く内に味が出てくる。そんな雰囲気の曲である。
この曲の背景を一言で言い表すなら、「自然消滅」ではないかと思う。何らかの形で距離を置いた恋人同士でが思いを募らせる主人公とは逆に現実はその繋がりを希薄にさせ、手応えを感じられなくなった現在に呆然としている、そんな姿が思い浮かぶ。
自分で提起しておいてなんだが、この「自然消滅」、相手が「別れましょう私から 消えましょうあなたから」の相手なら喜びそうである(笑)。ま、それはともかくと、注目したい部位が三ヶ所あるので見て頂たい。
まずは「無邪気な仕草も吐息も君の放つすべてを 敏感に受信するパラボラアンテナはいつだって 真実も狂言も何もかも録画しながら 都合のいい映像だけを流し続けていたんだ」という歌詞と「半端な見せ掛け」へと流れる下りである。
ダンエモンもまた惚れた相手の事となると五感が「パラボラアンテナ」並になる(それも距離の遠い相手のとき程(泣))。だが、感覚をそこまで鋭敏にして得た情報を役立てる術を知らず、結局泣きを見て、自分の中では「何もかも録画しながら 都合のいい映像だけを流し続け」、相手には実の伴わない「半端な見せ掛け」で終わってしまう。故にダンエモンはこの主人公に道場すると供に身につまされる思いがする。
次は「君の望みを叶えきれなかった弱さを 守れもしない約束した幼さを許して」である。守れない約束と言えば「もう一度だけ…」が思い出される。
それに続く「君のすべてを受け止めてくれる本物の愛と 運命のように出会って 早くこんな僕を忘れて」の歌詞がたとえ他人の手に委ねてでも自分の果たせなかった相手への想いが悲しい形で溢れている。自分の手で相手の望みを叶えられるのが一番に決まっているのだから……。
最後に注目したいのは「ナミダで見送りながら どこかでほっとしてる奴がいる アイシテイタヨ ズット ズット ズット……」というカタカナで綴られた歌詞が「ゲンキダシテ」を彷彿とさせると供に、捨てようにも捨て切れない気持ちを感じさせて秀逸である。
締めくくりにタイトルにも使われている「赤い糸」について触れたいが、そもそも将来結ばれる人と繋がれている、といわれる「赤い糸」の伝説は何の伝説が元になっているものだろうか?思い出せそうで思い出せない。それはともかく、相思相愛経験皆無のダンエモンに「将来結ばれるもの」という概念は理解しがたいものがあるが、信仰上、確かに「仏縁」や老若男女を問わず「腐れ縁」というものの存在を感じた経験はある。「赤い糸」も主観次第ということだろうか?どうせならロマンティックな「仏縁」を今後に期待したいものである(笑)。
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