あなたがいればそれだけでよかった

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 アルバム『LA、LA、LA』収録の曲。一言で言えば別れの曲である。前向きな内容の歌詞を持つ歌が多い摩季の歌の中で、珍しく過去を悔やむ曲である。悪く言えば女々しくすらある。まぁ、歌詞に出てくる主役がフラれた立場なのだから、マイナスの感情で歌われるのは当然で、別にそれに文句があるわけではない。それどころか、諦め切れない切なさが胸に染みる名曲だと思っているので、「熱くなれ」「ROCKs」『あぁ』などの激しい曲の合間に聞くのに最適だと思っている。
 歌詞の内容はこれも一つのストーリー型になっていて、恋人に別れを告げられるところから始まる。男の言い分や感情は殆ど出てこないが、主人公の一途さは随所に表れている。顕著なのは二番の出だしの「あてもないまま さまよう街は広すぎて」のところに現れている。別れの辛さから心を閉ざし、忘れたくても、体が忘れられないと語っているようである(変な意味で言っているのではない)。それは最後の「愛しているよ 今でも もう届かないけど」の部分にも現れている。
 もう一つ、我々に訴えてくるのは「変われなかった辛さ」にあると思う。「あなたが望む 人になれなかった」と歌う一方で、「変わればいいだけならすぐに 追いかけて行くのに」と歌っている。推察するに、男は女の性格のどこかに耐えられない物を感じていたのだろうが、女が自己の個性として、断つ訳に行かなかったものなのか、「変わる」のが遅いのか、それだけでは駄目なのか、兎に角、事は単純ではなさそうである。男と女が共に冷めてしまう愛の終わりも悲しいが、片方が愛しているまま取り残されて終わる愛は、一方に叶わぬ願いがある分、やはり後者の方が悲しく思われる。

摩季の間へ戻る