あのバスに乗って

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 SHIMIZU SYUNYA
解説 アルバム『RHYTHM BLACK』9番目に収録。摩季ソングには珍しく家庭的な雰囲気が漂う。別にそういう歌詞があるわけではないのだが…。
強いて言えば「バスに乗って」「君」の行動が日常的なものに見え、それを見守るか如きの主人公の視線が主婦の立場と似ているからだろう。
 ストーリー的には彼氏or夫が通勤に出ることで家庭とは別の顔をせざるを得なくなることに、そしてその是非に悩む姿をそっと見送り、本来の顔に戻るときの為に自分が何をしてあげられるだろうか?と思案を巡らせる姿が何とも言えない。
 個人的なことになるが、ダンエモンは社会人になって急にバスに乗ることが多くなったが、殆どが通勤である。それを振り返れば確かにバスに乗って出かける時は眠い頭を抱え、それから始まる仕事を考えては鬱々とした気持ちが多く、逆に帰ってくるときには本来の自分に戻る時間が来る、との思いを抱えていたことが確かにある。そしてそれは電車内で感じるのとは確かに異質なものだった。
 会社というものが商売上、概して電車の駅から近いところにあることから、通勤バスは大抵自宅と駅を結ぶことが多い。となると当然、出勤にしても帰宅にしてもバスにいるときは距離的に自宅に近いことになる。家庭への執着もそれだけ強まるだろう。
 注目したい歌詞は「黄昏時の公園 登ったジャングルジム 『これでよかったのかな』なんて 遠い目でふかしては消えるタバコの煙り 私まで悲しくなるけど 涙はこぼすと流れるから 早く帰ろう」である。恐らくは仕事での辛い姿を過程に見せられずに公園に佇んでいるのだろう。仕事の悩みを家庭に持ち込むのはカッコのいいものではない。だが、人間は孤独に弱いものである。
 悩む姿を見せたくなくて一人になるが、一人になるから余計に苦しくなる、結果として「早く帰ろう」となり、そして「今夜はエビフライ」と通常の夕食を浮かべるところに続くのが家庭への回帰性が現れていて、曲調とも合いまった姿が妙なるものがある。
 尚、歌詞には書かれていないが、歌の終わりにキンコーンとチャイムの音がして、インターホンを通したような摩季さんの声で「早く帰ってきてね」の台詞がある。それこそが最終的にお互いが求めるものであることを考えると甘い声に痺れるものを感じる俺は変だろうか?
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