あの日のまま

作詞 しいな恵 作曲 羽場仁志

解説 椎名恵改めしいな恵さんのファースト・ミニアルバム『君よ、永遠にあれ』の第2曲目にしてエントリーされている。久々に歌詞のみならず曲調にも何物をも寄せ付けず、邪魔するものを蹴散らしてでも進んでいく力強さの溢れる椎名ソングである(勿論何物にも潰されない芯の強さを持っているのはいつものことだ)。

 同アルバムで直前にエントリーされている「君よ、永遠にあれ」が愛する人の旅だちを見送るのに対して、「愛する人よ 私は旅立つ」と歌っているように自らの旅立ちと決意を述べており、続けて聴くと好対照なのもSehr gut(Very good)である。

 主人公である「私」「愛する人」「二人で描いた 夢は」とあることから、それなりにいい仲は築いたと思われるが、「伝えきれなくて この手をすり抜けた」とあることから想いを告白できなかったか、或いは何か伝えくれなかった部分を持ってしまっているのであろう。そして最後には如何なる形によるものか、遠く距離を隔つことになったのだろう。

 「海沿いを 長距離バスが行く 遠くに見える 小さな島」とあることから、主人公の旅立ちは物理的に故郷を後にするものでもあり、「風吹く景色は 出逢った あの日のまま まま…」とあることから未練を断ち切り、過去と決別する為に「旅立つ」ものでもあるのだろう。

 歌詞からは「私」「愛する人」がどこまでの関係であり、何が別れを生んだかは窺い知れない。だが一つ言えることがある。
 過去・未練・失恋と主人公は距離を置き、新たな物に向かおうとしている一方で主人公は「あの日のまま」持ち続けたい何かを胸に抱いているということである。勿論それを表す歌詞は「嬉しくて 幸せで 言葉もいらない そんな 想い 胸にあふれて」である。
 相思相愛を経験する前だったこの道場を創設した頃のダンエモンには実感できずにいたが、「嬉しくて 幸せで 言葉もいらない そんな 想い」は片想いであっても忘れられず、余程未来への足枷にならない限り忘れたくないものでもある。
 過去の片想いが丸で相手にされずにきた道場主と違って(苦笑)、「夢」「二人で描いた」様な仲なのだからその想いが軽かろう筈がない。

 過去の辛い思い出は時に足枷であり、時に発奮材料でもあり、それと向き合うのは容易ではないし、忘れてはならない場合もあるし、忘れられるものなら忘れてしまった方がいい場合も決して少なくない。
 だが過去が在って現在が在り、未来が生まれることとを忘れず、その為にもどんな辛い過去でも俯き、悔いるだけの姿勢で向き合ってはならないし、同時に無駄にしてもいけないことをこの「あの日のまま」に学ばせてもらった。御蔭で平成19年は力強いスタートが切れそうだ。

 些か蛇足なのを承知で付け加えたいのだが、「波うち際で はしゃぐ子供たち 二人で描いた 夢」のくだりには「いつか恋をしたら」が連想されたのが嬉しくもあった(笑)。


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平成一九(2007)年一月五日 最終更新