アララの呪文

作詞 さくらももこ 作曲 岡本真夜 編曲 十川ともじ

解説 岡本真夜さんのデビュー20周年記念アルバム『Mayo Okamoto 20th anniversary ALL TIME BEST〜みんなの頑張るを応援する』の14曲目に収録。

 人気アニメ『ちびまる子ちゃん』のエンディング曲で、作詞は原作者のさくらももこ先生、アニメにおける歌い手はお笑いコンビの爆笑問題がネズミにふんし、「爆チュー問題」の名でまるちゃんの声優である TARAKO さんと共に担当していた。う〜ん……考えてみるまでもなく凄い面子である…。

 同番組においては、第2期の第482話〜第850話(期間では2004年7月11日〜2012年3月25日の8年近くに及び、エンディング曲としては使用された期間は同番組使用曲中、最長である(2015年8月19日現在)。

 謂わば真夜さんが出産後の復帰から数年も経ない内に登場していた訳だが、ライブで歌われたのはデビュー15周年となる2010年が最初で、この度デビュー20周年を記念するアルバムにてCD収録となった。

 さくらももこ先生の作詞だけあって、ノリは名作「おどるポンポコリン」そっくりだが、同曲がユーモラス一直線に対し、この「アララの呪文」は洋楽でよく使われる「Que sera sera」(スペイン語で「なるようになる。」の意)をもじった「それはそれなりでも いいのさ ケセラ セラセラセラリンコ」という歌詞等にユーモラスでありながら、意味深なものを感じる。

 同様のリズムで歌われる「アララ カタブラツルリンコ」の歌詞も、アラブ風の魔術師キャラクターがよく唱える「アブラカタブラ」(古代中近東のアラム語で「このように消えてしまえ。」の意)をもじったと思われるが、その意味を噛みしめると直前の「不思議なことばかり あるのさ ネス湖 ツチノコ ナゾのバカ だからへんてこでも いいのさ」の歌詞もなる程、と思えてくる(笑)。


 コミカルなリズムを全体として持ちつつも、「ふとした はずみで ケンカ しちゃったけれど ごめんね 言えずに ひとり 走る帰り道」「迷って 悩んで 涙 あふれ出しても」「何かで つまづいたり 立ち直れ なかったり いろんな 事がある 人生だから」「ひとりで 泣いてる時も 思い出してね」といった子供っぽい感傷でありながら、大人の世界にも相通ずる悩みを盛り込まれている。
 そして、それらに呼応した、「明日は お日様 もっと 輝いているよ」「たとえば 誰かに キモチ 届かなくても はるかな メロディ ずっと 流れ続けてる」「時には まちがえたり 叱られて しまったり いろんな 事がある 人生だけど」や 「あなたの 笑顔が きっと すぐに駆けてくる」といった、やはり子供っぽくても時間の経過とともに立ち直れる人間の強さが盛り込まれているのが秀逸である。

 まさに「勇気が湧いてくる 呪文」といえよう。

 人間、自分の能力で充分事足りたり、時の運が味方していたり、有能な仲間に恵まれたり、敵対者が勝手に自滅してくれているときに成功を収めたり、頑張ったりするのは難しくない。
 能力が及ばなかったり、天運が味方しなかったり、有能な仲間に恵まれ無かったり、敵対者の方が一枚上手だったりするときにはただ頑張るだけでも相当な苦痛となる。
 だが振り返ってみると、意外とそんな時に心の支えとなるのが、「なんとなく可笑しいね 願い事 叶うかな」という気楽に前向きな気持ちであることは結構多かったりする。それゆえ、ラストの「ジャンジャカジャン」直前としてすごくよく出来た歌詞と思う。

 ちなみに、アルバム『Mayo Okamoto 20th anniversary ALL TIME BEST〜みんなの頑張るを応援する』におけるこの曲では、「なんとなく可笑しいね 願い事 叶うかな」「ジャンジャカジャン」の間がアニメのエンディングや、ライブで真夜さんが歌った時と比べても長めに取られている。
 これはダンエモンの勝手な予測だが、前向きな気持ちを取り戻した故にコミカルに締めているところを後々程強調したくなったのではなかろうか?

 深読みもいいところかも知れないが(苦笑)。



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平成二七(2015)年八月一八日 最終更新