at Home

         作詞 小倉佳 作曲 松尾清憲
解説 椎名恵さんの結婚式に相応しい曲を集めたアルバム『Wedding Songs』のトリである8曲目(実際にはこの後カラオケバージョンがエントリーされている)に収録されている曲で、同アルバム収録の8曲の中では「Baby Baby」とともにこのアルバムの為に書き下ろしたオリジナルで、「Heart On Fire」等の様な既存曲でもなければ、クラッシックのカバーでもない貴重な存在。
 アルバムの歌詞カードで椎名さんは「二人の幸せを形にしてゆくための家庭」とのコメントをこの曲に寄せている。
 この曲の主人公に一言を贈るなら、「お甘えん坊さん(笑)」である。冒頭の「つまずいてホントは 自分で立てるのに あなたの差し出す 手を待つの」「いつだって迎える 明日は初対面」には子供っぽさというより、あどけなさ、そしてそれ以上の純情を感じて、年増好みのダンエモンが妙な心地よさを覚える(笑)。
 普段は年上の女性に甘えたがるダンエモン(苦笑)がこの曲の主人公のような女性なら甘えられてみたいと思うのだ。そしてその一方で「言葉に出さないアリガトウ」「あなたが遠くを視る時の 瞳に私の幸せ」といった歌詞が心地よさに拍車をかける。
 何と言おうか…その…目に見えず、耳に聞こえずとも心に感じる何か温かい、それこそ「at Home」な存在を信じさせてくれる心地良さがこの歌にある。
 道場主はかつて非常任師範代・田夫野人の母上に恋愛相談に乗って頂いた際に、実際の所恋人同士が最後まで添い遂げる相手として選ぶのは見栄えの美しさや金銭、社会的地位より人間の根本が同居しうる心の安らぎを持てる相手、と教えられたことがある。
 「永遠に変わらぬ誓いの愛は夢」とあるが、最も基本的でありながら最も望まれて然るべき愛の究極体を見事に言い表された気がする。
 はっきりいって、この世という世界は悲しい事、辛い事、酷い事が多く、強弱や貴賎、才能に関係なくありとあらゆる苦しみと無縁ということはまず考えられない。そんな時に最も心がともにあって欲しい伴侶が主人公にとっての「あなた」であることを考えると、「なんとなく何かで心が 揺らぐ夜 あなたのどこかに触れてみる」の歌詞がとても深い意味を持って胸に迫ってくる感覚に捕らわれた。
 「あなたのどこか」が体か心かは明らかではないが、どちらか、或いは別の何かだったとしても「どこか」にさしたる重要性はないだろう。もちろん重要性は「あなたの」にある。それが何となく理解できていたからこそ、度助平人間であるダンエモンが「触れてみる」に何のイヤらしさも感じなかった。
 この世に生まれ出た命はいずれ天に召される時が来る。それを避けることは誰にもできないが、ならばその魂が、心が最も安らげる場所と相手を人生に見つけたとしたら、それこそが「at Home」なのかも知れない。

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