Because,You...feat.春畑道哉 from TUBE

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 春畑道哉

解説 摩季ネェの14thアルバム『MUSIC MUCSLE』Disc1「FIGHTING MUSCLE」の10番目に収録されている。
 前奏曲からして壮大さを感じさせる一曲で、歌詞的にも時の流れや「運命」「未来」といった大きなものに挑む姿勢を見せつつも、見据えているものは恐ろしく身近である。

 歌詞から推測するに、主人公と、想い人として何度も余韻付きで連呼される「You」とは、冒頭にて「一つの物語 終わりゆくまで どれだけの出会いと別れがあるのだろうか あなたと共に過ごした軌跡 笑顔も悲しみも計り知れない 幾千の時よ」とあることから、それなりの長い時を過ごしてきたのだろう。

 その時間の中でどんな出来事があったのかは語られていないが、「二人で見てみたい 景色があったんだ 夢を叶え合った 眩しく粋美な頂 あの頃の挫折は 無防備に挫いただけ ならば まだ尽くしていない 最善が どこかにあるということ」の歌詞から、恐らくは何気ない日常の中にささやかな幸せを感じつつ、一方で何がしかの挫折も重ねていたのだろう。

 さて………ここからが大事である。
 解説する者として、背景を読み間違えるとこの解説を大きく殺しかねないが、それでも普段は全く信用していない自分のセンス(苦笑)をここでは信じて進めてみたい。

 思うに、主人公は「You」との時間の重大な岐路に立っているのだろう。それこそ人生の大舞台に立っているかの如く。
 「一つの物語 終わりゆくまで」「悔やまぬように 覚えてきた 言葉はそれだけじゃ希薄で 限られた自由をこのまま 自分と諭すために費やすくらいなら 使い果たしてみたい」「Good-Bye,You… Only You… 運命を変えたくなっただけ」の歌詞から、もしかすると二人は別れに臨んでいるのかもしれない。
 「Because You… For You… 本当の笑顔 見せたいから」「Because You… For You… 無邪気な笑顔 見たいから」の歌詞からも、「You」が本来持っている大切な何かを守る為に、現状を変えようとしていることが感じられる。

 はっきり云えることは、主人公が変化を望むとともに、全力を尽くし切ったと思っていないことだろう。
 「未来を変えたくなっただけ」の歌詞は現状のままで良いと思っていないことを明言しており、「まだ尽くしていない 最善が どこかにあるということ」「限られた自由をこのまま 自分と諭すために費やすくらいなら 使い果たしてみたい」の歌詞から、これまでの努力にも幾ばくかの反省ややり残しを見出しているのだろう。

 かかる想いや決意をもって主人公が「You」とどうあらんとしているかは正直読み切れない。
 ただ、「You」への想いは鉄壁且つ揺るぎないものであろう。「未来を変えたくなっただけ」としている以上、現状をより良くしようとしている訳だから、例え「You」の為に距離を置いたとしても、それは「You」の為で、サビにて余韻を含ませつつ連呼する「You」が主人公の思い描く「未来」にいないことはあり得ない。

 推測による解説ばかりで何だが、目指す未来の過程がどうあろうと、最後に念ずるのは「Beside You」であろう。
 摩季ソングには時の流れも日常の悩みも忘れてただただ想い人の側に居たい意を謳う歌詞が多く、この「Beside You」を見れば、いの一番に「風に吹かれて」を思い出す。
 別の云い方をすれば、ファースト・アルバム『STOP MOTION』収録時にて歌われている一念が四半世紀以上を経ても健在なのが喜ばしい。

 閉めに述べておきたいのは、すべての想いが「You」あってのことで、「You」に対するもので、どこまでも「You」を想う気持ちを歌い上げていることでは摩季ソングの中でも屈指であろうことである。

 主人公がどんな「未来」を見据えて現状をどう変えようとしているのか?
 その結果「You」との距離や関係はどう変わろうとしているのか?

 すべては不詳だが、どんな「未来」であろうと「You」への想いが失われる事だけはないだろう。それに対する「Because」 (=何故なら)を論じるのは野暮と云うものだろう(笑)。


摩季の間へ戻る

令和五(2023)年一月二七日 最終更新