Bye,My love

作詞 椎名恵 作曲 松田良 編曲 見良津健雄
解説 椎名恵さんの12thアルバム『Cherish』の8曲目に収録。別れを歌った数多い椎名ソングに会っても、辛い別れの中に再会も含めた互いの未来を見据えんとしている様が秀逸な一曲。様々に意味で同アルバムに収録されているもう一つの別れの歌である「あなたを忘れたくて」とは好対照。
 「あなたを忘れたくて」が失恋の痛手も癒えぬ振られた直後であるのに対して、この曲は「あなたからの電話のベルが鳴らなくなって 今どれくらい経つのかも 忘れかけていた」とある様に、別れからある程度の時間が経過している。
 また、この曲では過去を忘れようとの意図は丸でなく、「二人幸せだった 二人とても大人になった」という思い出の中のプラス面と「二人離れて行った 二人とても孤独だった」という別れに至ったマイナス面をともに重視し、そこに例え恋人同士に戻れなくても「いつか私達友達になりたいね」「いつか私達幸せをつかもうよ」という風に思い出を基にした未来を描いている点にも注目したい。
 道場主はン回の失恋経験を持っているが、いずれも付き合う事無く終わったものなので、この曲の主人公とは様相が異なるが、仮にかつて愛した人と再会して、何人が友達やよき知人となれるだろうか?先輩と後輩の関係になら戻れそうな人、丸で検討のつかない人、残念ながらできれば二度と顔を合わさない方が望ましい人、良き友人であれそうな人、と様々だが、全員結婚しているのでこの曲の主人公がどこか心密かに抱いている願望の様にはならないな(苦笑)。勿論それよりは今現在の相手の方が大切だし、その人と別れた後の事など想像したくはない(真剣)。
 例えその過程に「抱き合うだけじゃ埋められなくて 会話さえなくした」という風な自然消滅的な別れではあっても、相手に対する想いを抱きながら余儀なくされる別れが辛くない筈がないし、辛くない別れと言うのもまた寂しい。
 「Bye,My love」と力強く、進む様でもあり、断ち切る様でもある叫びには前向きな面と後ろ向きな面が見受けられるが、そもそも別れに100%の幸福など有り得ない。だが、辛さを断ち切る意味と、そこから始まる未来に向かうと言う双方の意味からこの歌詞に込められた力強さの意味を尊重したい。
 その一方で、「今日この空の下 少しぐらい泣いてもいいよ」「少し」が何を指して、どれほどのものかは不明だが、その「少し」の中に大いなる未来への熱意が含まれていることが願われてならない事を記してこの解説を締めたい。
 

恵の間へ戻る