Cross Fade

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし


解説 ファースト・マキシシングル「虹ヲコエテ」のC/W曲で、主人公と付き合い出したばかりの彼氏と、その彼氏と別れたばかりの前の彼女との三角関係が背景となっている。
 似たシチュエーションで歌われている歌に「戸惑いながら」があるが、「戸惑いながら」が主人公の疑心暗鬼とも取れる三角関係に対して、この「Cross Fade」はかなり強い感情の波動が飛び交っている。興味深いのは非情に徹しきれない何処までも「人間」な主人公の姿である。
 「"人は皆、誰かの犠牲の上で生きている" 深く尊びながら踏み締めて行くべきだって」という意見に対して「そう思えたらいいのに Can't,Can't,I can't yet,Can't」と歌っているように出来ずにいる。「逆の立場なら」と考えてしまうような、別の角度から見ると「自分を責めちゃう」ことによって「安心」する非情に徹し切れない人間なのである。

 経験上思うのだが、他人と付き合っている好きな人を獲ろうとする立場では、獲られてしまう相手を思い遣る余裕など全くない!(苦笑)
 ただでさえ不利なのがそんな甘っちょろいことでは成功は覚束ない(非情に徹しても成功しなかったし…)。そして獲られまいとする側も同じ相手に惚れた敵に対して思うことは様々でも情けは掛ける訳にはいかない。理由など説明するまでもないだろう。それでも相手のことを考えてしまうのは二つの理由があると思う。

 一つは「命がけの彼女も怖いの」という歌詞にあるように今の立場を逆転されることだろう。
 そしてもう一つは罪悪感にあると思う。
 横恋慕には残念ながら愛している筈の人に愛情の破壊をさせるという罪が伴う。
 自分がフラれるにしても、付き合っている相手が捨てられるにしてもどちらかの想いを拒絶しなければならない以上これは避けようがない。
 云えた義理じゃないが、只でさえ望ましくない横恋慕を上記の罪を知らない奴は尚のことやってはいけないと思う。

 話が逸れたが、主人公も彼氏に愛情の破壊をさせた、との罪悪感が伴うから、「傷つけられるためだけに もう行かなくていいよ」「あなたが彼女をかばうから 何も出来ないよ」「わたしさえいなければ… こんなに好きにならなければ」「偽善者だよね私 愛を奪おうとしているのに」等の歌詞が出てくるのだと思う。
 特に「偽善者」は極めつけだ。
 ダンエモンは「偽善」と「悪」は異なる存在だと思っている。詳細を説明すると長くなる上に本筋から逸れるので別の機会に譲りたいが、これだけは云っておきたい。
 「偽善」には「善」であろうとしながらそこに他者に対して「害」となる結果を含むが為に「偽りの善」とされてしまっている、当の本人にとって不本意な呼ばれ方をされてしまっているものもあるのである。頭から私欲の為に善を装うのは「悪」である、とダンエモンは考える。
 「世の中に「善人」は一人もいない、「悪人」と「偽善者」しかいない。」と考える人は、あなたの唱える「偽善」の幅を今一度考えて欲しい。

 最後に触れておきたい歌詞は「Get out from my heart Get out from my life Get up by my self Get up by my love」である。「私の心から出ていけ。私の生活から出ていけ。私自身から起き上がれ。私の愛から起き上がれ。」という四つの命令形は主人公の愛情と困惑の狭間で揺れ動く様々な感情に起因していることがうかがえる。
 横恋慕は本当に望ましくない。確かに破壊が伴う、罪があるとわかっていても抱かずにいられない愛もあるだろう。しかし愛に罪を望まないなら誰をも傷付けない恋にしたいものである。経験上本当にそう思う。

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令和五(2023)年九月二一日 最終更新