だけど、愛してる

解説　椎名恵さんの11thアルバム『Lovers』の8曲目に収録。椎名ソングには珍しく秘めたるオフィスラブがその舞台となっている。
　概略を話すとストーリー的ではなく日常的なのもこの曲の特色だろうか？「オフィスでは他人」として振る舞いつつも、社内の様々な局面で主人公は｢あなた｣の為に何かと気遣い、心を砕き、その一方で｢あなた｣への尽力を最後には自分に返す事を暗に要請している。
　ダンエモン個人的には「いつもママの役目をさせる」世話女房的な女性である主人公を彼女に持ち、手を焼かせつつも「だけどこんなんい、とてもこんなに　Uh〜　いとしくなるの」と想われている｢あなた｣がひたすら羨ましい(苦笑)。
　さて、注目したいのは「モテる」男である「あなた」に｢私だけ愛してね｣と願いつつ、主人公が随分｢あなた｣の面子を立てている点である。
　ダンエモンなら愛する女性を他の誰かにとられるリスクを考えれば、愛する女性の魅力は自分だけが気付いていれば良くて、彼女にはむしろもてない人でいて欲しいと考える(苦笑)のだが、この主人公は違う。
　｢あんな古い歌｣を歌って｢打ち上げ｣を盛り下げた｢あなた｣のことを「アンバランスなのも彼の魅力だね」と｢楽じゃない｣気を遣い、もてる「あなた」に｢誰かとランチしても　そこまでなら許すわ｣などと気苦労も耐えない。なぜそこまで出来るのだろうか？
　恐らくは最終的な所で自分だけが愛されているとの喜びだろう。｢ママの役目｣を果たして、｢あなた｣の為に尽くしている、誤解を恐れずに言い換えれば｢背中に指あてたら　両手を上げなさいね｣とある様に｢あなた｣を支配しているとの確信に主人公の頑張れる原因があるのだろう。
　主人公は｢あなた｣の為に気遣いも気苦労も絶えない。がしかし、｢あなた｣の為に動き、それゆえに｢あなた｣を自分の物としている自信と喜びを持つ……全く、｢だけど、愛してる｣とは上手いタイトルをつけたものである(笑)。


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