Dramatic<Drastic

         作詞 椎名恵 作曲 アルビノーニ
  解説 クラシックをカバーした椎名恵さんのアルバム『toy box〜Classical〜』の5曲目に収録。
 同アルバムの歌詞カードによると、椎名さんは「この曲がアルビノーニの「アダージョ」と気が付かないほどに、変化させています。かけあいのコーラスもスリリング感を作り出していて、ギターとホーンセクションを使ってラテンテイストが効果的に表されています。」とコメントしている。
 歌詞内容は見せかけの恋を否定し、徹底した真実と思い切りのある恋を求める気持ちを五感やスペリングの似た英単語の対句をもって皮肉を効かせつつ表現している所が凝っている。
 例を挙げればタイトルにも使われている「Dramatic」=劇的よりも「Drastic」=徹底的を、別の部位では「Liberal」=開放的を「気取」るよりも、「Radical」=急進的でも本気になる事を訴えている点が挙げられる。
 上っ面だけの優しさや愛情で自分に都合のいい関係だけを持ちたがる嫌な男は椎名ソングによく現れる。そしてその男達の大半は自らの自己中心振りに気付いてさえいない。同じ男として、決してそうあってはいけない、とダンエモンは日々自分に言い聞かせてはいるが、この曲に出てくる「あなた」もまたそんな男の一人である。
 もう一点注目したい歌詞は「あなたが望む そんな自由は 救いようのない 孤独なのよ」である。「自由」「孤独」もまた背中合せにして、対句となり得る語である。そしてその対句ぶりは椎名ソングに限らず様々な歌謡曲に使われ、物事の一長一短に付いても考えさせられる。
 だがこの曲で大切なのは「あなた」の思い込む、もしくは都合よく解釈する「自由」が最終的には主人公に見放されて生まれる「孤独」に繋がりかねない点である。「孤独」であるゆえに「自由」なのならいいとしても、「自由」を欲して「孤独」になるのは一抹の寂しさが漂う事をこの曲は特に教えてくれている事と、それらを踏まえて、そんな空しさを吹き飛ばすほどの「Drastic」を主人公が何より求めている事に触れる事でこの解説を締めたい。


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