DREAM

         作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 小川知司
解説 いきなりだが、何故この曲がシングルでリリースされなかったのだろうか?と考えてしまう時がある。アルバム『Pureness』の5曲目に収録されているこの曲は同アルバム収録曲だけでなく真夜ソング全体の中にあってもダンエモンにとって最も愛好する曲の一つである。
 タイトルの「DREAM」が意味する夢は睡眠中の空想ではなく、野望・大志の同義語とも言える夢であり、勿論動詞としての意味も持つ。
特に好きな曲なので解説にも力が入る(笑)。まず冒頭の「AH 出会えてよかった 心から思うの」であるが、この出会いを喜ぶ歌詞は様々な歌にも使われ、愛することの喜びとして誠に心地いいものがある(例、「宝物」、大黒摩季:「そして」、小泉今日子「木枯らしに抱かれて」)。「いつのまにか 笑ってる私」というのも自然な雰囲気が持つ何気なさに二人でいる幸せが存在することを雄弁に語っている。他の真夜ソングにも何気ない日常の持つ愛しさを語るものが見られる(例:「TOMMOROW」「FOREVER」等)。
続く歌詞である「あなたの声 ききたかった 泣かないつもりで 話だけをきいて ほしかったのに ごめんね」は好きな人の前だからこそ強くありたい気持ちと、弱い本音が現れてしまう自然な反応とが歌われている。本音を晒せる相手、というのは内容にもよるが、その存在だけで有り難い事を時には振り返ることも大切ではないだろうか?
いよいよ核心に触れるが、「「簡単に夢が叶ってしまうのは おもしろくないだろ」また 勇気もらった」は名言である。ともすれば夢が叶わない事を嘆きたくなるのが人情だが、逆境を乗り越えて叶えるからこそ夢の為に生きることの尊さがある事を「あなた」が語っているわけだが、理屈としては誰もが理解していながらもそれを声に出すのはなかなか出来ることではない。そしてそれに対して「また 勇気もらった」と応える主人公の心根もまた見事である。この歌詞は本当に大好きである。
それに続く「ポケベルに今日も「ガンバレ」のメッセージ 泣きたいくらい うれしくて なかなか会えない だけどあなたはいつも 心の中にいるから」であるが、この「ガンバレ」のメッセージをもらって感激する描写は「宝物」にも見られる。「宝物」ではFAXが使われていたので、いずれE-mailで同じことをする歌詞が出てくると思われる(笑)。単純な言葉でも送られた相手とタイミングが大きな喜びをもたらしてくれる好例を示してくれている。そしてそんな喜びをもたらしてくれる人だから「なかなか会え」なくても「心の中にいる」と断言できるのだろう。「心の中にいる」人とは「心の中に」置いておきたい人物なのだから。「見上げた空の 青さに手を広げ 気持ちいいねと いつか 笑顔で 言えるように」と望むのもそんな人とそんな時を過ごしたい気持ちだろう。普段(存在しない)愛しい人とHな時間を過ごすことばかり考えているダンエモンは自分が恥ずかしくなる(苦笑)。
再びサビに入るが、「強くなんかないけど 自分が輝ける場所にいたいから 逃げることはできない」の部分に注目したい。「強くなんかない」としながら自分の望むべきもののためにも「逃げることはできない」としている、それこそが強さであることは誰しもが認めるところだろう。弱い相手や安易な状況にがんばることは簡単なことでそこに強さは関連しない。だが、手強い相手こそ、困難な逆境こそがんばる意義も大きく強さも求められる。岡本真夜のみならず、大黒摩季・椎名恵、とダンエモンの好きなアーティストは本当に強さの意味・本当の強さを教えてくれる。
最後にコアに触れる。「この都会に出てきた時の 半端じゃない気持ち 思い出したよ 今しかできない コトがあるよね 今だからできる コトがあるよね」は例えて言うなら岡本真夜版「初心を忘れるべからず」だろうか?本当にがんばる意義はスタート地点にこそあって、得てして人間はそれを中途に置き去りにしそうになる。そんな意味を噛み締めて今後もこの「DREAM」を聴いていきたい、と断じて解説を終わりたい。


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