作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 シングルCDの7番目「白いGradation」のカップリング曲である。一つの宣戦布告と云うか決意表明と取れる歌である。
惚れた相手を「アイツ」と称しており、歌詞の流れからもそこそこ仲がいい相手であることがうかがえ、恐らくはその関係が告白したり、新たな進展を求めることで悪い方に行くのを恐れる気持ちに躊躇しているのがうかがえる。シチュエーションとしては「うそつき」がだぶる。
主人公の心境は二通り描かれており、一つは便利な友人として利用されてきた日々への回顧であり、もう一つは告白という名の戦闘への参戦への決意である。「すれ違う淋しさ愛してた 皮肉な友達…明日も友達?!」、「ハロウィンもクリスマスも嫌い 立場的に盛り上げて Monkey Tricks こっそり夜に繰り出す二人 見送るエレベーター イイ奴だよ私…」という回想は自虐的ですらある。
歌詞からは意中の彼のみならず、その彼女とも交友関係があるようにうかがえ、好きな気持ちを伏せて「仲の良い」と云うよりは「都合の良い」友を演じてきた拷問に似た辛さもうかがえる。中途半端な仲の良さがもたらす悲劇は建前が横行し、本音だけでは生きられない現実社会の弊害だろうか?
「開幕宣言」はそんな建前人生への決別宣言でもあるのだろう。そこで注目したいのが「自信はないけど準備は完了!! 盛り上げてね Brother 恋する乙女なんて弱気なものよ」の歌詞である。一見するとこの歌詞は矛盾している。
「自信はない」のに「準備は完了」で「弱気」だから「盛り上げて」くれというのである。初めに聴いたときは丸で理解出来なかったが、「読者百篇 意自ずから通ず」とでも云おうか、何度となく聴いている内に、主人公は成功か失敗かにこだわるのではなく、好きか嫌いかの本音で当たることに対する決心が着いたからこそ、勝算を考えればその準備は心もとなく、気持ちの在り様としては「準備は完了」と断言出来るのである。一見矛盾しているように見えてよく出来た歌詞であると感じ入っている。
決してすべての弱さを振り切った訳ではないが、それでも心に確かな戦意を持っているのがこの曲の魅力と締めたい
令和四(2022)年六月三日 最終更新