EXPLOSION

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 原田喧太

解説 摩季ネェの14thアルバム『MUSIC MUCSLE』Disc1「FIGHTING MUSCLE」の13番目に収録されている。
 曲調や戦いがテーマになっているところが直前に収録されている「FIGHT★GO☆FIGHT 〜戦え BLOODY HEART 〜feat.TAKUYA」とやや似ているが、背景的にはこの「EXPLOSION」の方がややネガティブである。

 歌詞の滑り出しで、「『夢は叶う。』だなんて 気軽に言わないで欲しい チャンスは平等じゃない タダじゃない」煌めくDNAも後ろ盾もないアタシは 当たって砕けて血だらけ SHINE 眩しい夏が CRY 淡々と過ぎてく BLIND 夏色のワンピースも着ないまま」とあることから、生まれ持った才能やコネクションに恵まれていた訳でもない主人公は、数々の挫折に打ちひしがれ、軽々しい応援にさえ嫌気が差している中で、時間の浪費に苛まされているのが分かる。

 同時に、「本当に好きだった ずっと一緒にいたかった 愛なら待っててくれる と信じてた 「僕がいなくても君は大丈夫。」じゃないのに LOVE IS ALLな彼女と そう FAR AWAY」の歌詞から、恋を失うと云う痛手も(恐らくは)同時に味わっているのだろう。
 推測するに、夢を追う強さがあったことが却って仇となり、「僕」は主人公程の強さを持たない女性を守る様に主人公から離れたのだろう。

 だが、主人公は決して凹んだまま終わろうとしているのではない。もしそうなら摩季ソングじゃない(笑)。
 サビの「願いよ 今 輝け 努力よ 今 花咲け チャンスよ 寄り道せずこっちへ来い 時よ 払った犠牲よ 千倍になって戻って来い」の歌詞に歌われている様に、惨めな思いをしたからこそ、今こそ勝利と成果を貪欲なまでに得ずにはいられるものかとの気概を発している。そう、投資はしっかり回収せずにはおかない意志を漲らしているのである。

 同時に、失ったものを取り戻す意欲も強い。
 上述の失恋に対して、「愛なら待っててくれる と信じてた」とあり、それは叶わなかった訳だが、その後に「LAST あと1年、2年でダメなら止めて LET’S GO HOME 覚悟を決めると来る NEW ORDER」とも歌っている。
 「待っててくれる」としたからこそ、「あと1年、2年で」との諦めの悪さと、「ダメなら止めて LET’S GO HOME 覚悟を決めると来る NEW ORDER」という未来への見据えが併存している様に得も云えぬものがある。

 そして一番注目するのは、タイトルの「EXPLOSION」=「爆発」にも通ずる話だが、破壊と再生だろう。
 良く云われることだが、何かが終わって別の何かが始まるのは人生においてよくある話である。終わりを迎えたものを惜しむ気持ちが無い訳ではないとは思うが、主人公は「失うものはもう無い 終わりだって自分次第 最後はすべて懸けて METEOになれ 走れ!走れ!!突っ走れ!! 飛べ!飛べ!!飛び込め!!!明日を掴め」として失うものの無い強さ、終わりを覚悟した強さを歌い、直後に「弱さがアタシの武器 ネガティブは検索エンジン 使えるもの駆使すれば必ず届く 歴史にも刻まれない マクロの人生だからこそ 生きた証を焼きつけろ」の歌詞で、弱いからこそ利用出来る、弱くても達し得るものがこの世にはあることを訴えている様が心地良い。

 やるだけやって駄目だったなら、いっそのことそれを爆発させるようにぶっ壊して次に挑む………だが、その次こそは先の失敗における投資や貸しをしっかり千倍返ししてもらう意欲と必勝の信念を持つ………そうであってこそ、人生のネガティブ経験を肥やしに出来ると云い切れるのだろう。
 勝利至上主義や結果至上主義は言葉としては嫌いだが、最後の満足いく勝利や成果が得られないと自分自身が納得出来ないのは誰しもが知らず知らずの内に気付いていることである。

 そして過去の苦渋をすべて清算出来る程の成果を達成する為にもまずは自分が自分を諦めてはいけないことを「LIFE 誰にも期待されず 望みもせず生きてた あの頃の空虚よりは痛いけど アタシは私に まだ期待してる」の歌詞が教えてくれている。
 恥を晒すと道場主は少年の頃から挑んで来た数々のスポーツにて三流選手に終わり、選手としては恩師にも、仲間にも、亡父にも全く期待されなかった。また社会人になってからも幾つかの職を解雇されているが、これらは雇用主や上司から見捨てられた結果である。だが、どんな惨めな思いをして、居るべき場所を失っても、自分自身から離れることは出来ない。それゆえ自分で自分を見捨てたら本当におしまいである。
 幸いと云っては変だが、道場主は諦めが悪く、自分で自分を見限ってもまた別の希望を抱く人間で、間違っても失望・絶望したからと云って自分を切り捨てるような勇気(?)も持ち得ない臆病者である。
 それゆえ、ラストの「失うものはもう無い 戦わずに負けるのはやだ 持てるすべてを懸けて METEOになる 決めなきゃ限界もない 超えた先の絶景を見たい なら 最強のフレアになって EXPLOSION」の歌詞に強く共感するのである。

 何の勝算も、根拠もないが、もし「時」「払った犠牲」「千倍になって戻って来」るとしたら………………物凄く顔がにやけて来るな(笑)。勿論、その為に為さなければならない努力は山の様にある訳だが。


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令和五(2023)年四月一日 最終更新