friendship

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 SOGAWA TOMOJI
解説 アルバム『RHYTHM BLACK』の10番目に収録されているこの曲はダンエモンにとって、収録曲中一、二を争う「Cyber Love」「運命なんかクソ食らえ ーRUNAWAY BLOOD−」に匹敵するぐらい好きな曲である。何故この「friendship」が両曲の後塵を拝しているかについては明確な理由はなく、単にダンエモンのフィーリングの問題である。恐らくは激しいか否かの相違だろう。勿論その時々の気分次第でこの曲は充分両曲に勝りうることもある。
 この曲の魅力は時間も距離も越えた絆とその絆への思いにある。「always all days 心は一緒にいるよ ひとりぼっちになった時にはきっと 私の笑顔 つまらないJOKEを思い出して 微笑って」という冒頭の歌詞は離れ離れになっても思い出が力になり得ることを、続く「別々の道を選んだgraduation 離れても変わらないと誓ったairport 恋に傷つき愛を知るように 悩みも深くなっていくけど きっとあなたは大丈夫 根拠はないけどそう思うから」という歌詞は自分だけではなく相手も頑張れること、そしてそう思うことで自分も頑張れることが歌われている。
「今でも信じているよ いつか必ず夢は叶うものだって 例えあなたが未来を見失っても 私は決して忘れない」に目を転じると、辛い事もあり得る未来にも共に夢を語りあったことが互いの励みになることを述べている。更に「辛いこといっぱいあるけれど 光が見えずに迷ってばかりいた私に あなたがくれたラインストーンのネックレス 今もこの胸に ずっと輝いてる」の歌詞で思い出の品が形と心としてそれまでの歌詞を肯定しているところも見逃せない。
  この曲の歌詞の魅力はもう一つ。力や結果、勝利ばかりを追求し、そのために手段を選ばず、人情を無視する歪んだ競争社会への非難とその様なものに囚われず自分らしく生きる人への賞賛の姿勢である。それを示している歌詞が、「犠牲だとか苦労だとか ツラくさせる言葉大っ嫌い!」「「単純で人に親切すぎる」 いけないわけじゃない 素晴らしいことよ」「人を押しのけてく強さだとか 過去を切り捨てるcoolさとか 孤独で飾られるような成功なんて 私ならいらない」である。
そしてそれに続く「ありのままでいようよ 『エラそうに言わないで』 確かにすべて わからないけど 世界中がみんなあなたを責めても 私はあなたの味方だよ」という歌詞は清廉に生きる相手への確かな思いを際立たせている。ダンエモンはこの歌詞を初めて聞いたとき、その昔、週刊少年ジャンプに掲載されていた「聖闘士星矢(セイントせいや)」の童虎と春麗の会話を思い出した。
   *      *      *      *      *      *      *
冥王ハーデスとの戦いに赴く為、中国五老峰を発とうとした天秤座の黄金聖闘士童虎は愛弟子・龍星座の青銅聖闘士紫竜の恋人・春麗に永遠の別れを告げ、その際に紫龍といつまでも仲睦まじくすることを勧める。
ただならぬ決意とは裏腹に穏やかな童虎に春麗は理由を尋ねるが、童虎は言を左右にして明確な答えを出さない。既にサガの乱・海王ポセイドンの覚醒で死闘の限りを尽くした紫竜を聖闘士達は二度と戦場に立たさないと決めていたため、その長老格である童虎は春麗に紫龍を二度と側から離さないことを託す。
訝しがる春麗に童虎は「あの優しい紫龍を手放すんじゃない。例え世界全てを敵に回しても貫く。そんな愛があってもいいんじゃないか。」との台詞を残して涙ぐむ春麗の元を去った。
   *      *      *      *      *      *      *
 些か脱線が過ぎた。世界を敵に回しても貫く愛、というものが純愛、と捉えられるか、恋人達だけのエゴと捉えられるかは時と場合によって賛否両論分かれるところだが、この「friendship」の歌詞、童虎の台詞を見る限りにはせめてその志の高さは買いたいものである。
 一つだけ惜しむらくはこの曲における「私」と「あなた」の関係が少しばかり不透明であること。推測するに学生時代恋人同士だったものが何らかの事情で卒業を前後して別れ、純愛を友情−「friendship」に昇華させた者ではないか、と思われるのだが、確信は持てない。もっとも、敢えて不透明なのもこの曲の醍醐味と思われるが…。
最後にこの曲にまつわる思い出を語って締めにしたい。2003年8月27日静岡県浜松市において、ダンエモンは摩季ライブに参加し、この曲を堪能してきたのだが、この曲が始まる前に摩季さんが多くのファンに感謝の念を込めて作った、と紹介されていた。この約3ヶ月後に摩季さんが入籍したことを知る今となっては、婚約済みの摩季さんが自分を愛してくれたファンには友情−「friendship」としてけじめをつけたのではないかと思われてならない。そうなると名曲も些か寂しいがこれはダンエモンの感傷に他ならない。
摩季の間へ戻る