作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 13番目のシングル曲「あぁ」のC/W曲であり、C/W曲としては異例なことに新曲でないにもかかわらず、平成11(1999)年のライブで歌われていた。
似たような曲を例示すると「アレ・コレ考えたって」が挙げられる。主人公の性別が異なるが、思い通りにならない怠惰的な日常を戒め、明日への発奮に繋げようとする骨子は同じである。ただその覚悟が少し違う。
「アレ・コレ考えたって」が悩みを捨てて、恐れずに進もうとする姿勢は乱暴な云い方をすると思考の放棄とも取れかねない。が、この「ガンバルシカナイジャナイ？！」では「どっちみち大変ならやりたいことしよう」と同じ辛い中でも前向きに生きる事の大切さを自他に云い聞かせていて、そういう視点で両曲を比較すると大黒摩季という一人のアーティストの作詞能力に人間的な成長がうかがえて興味深い(この際「ナルヨウニナルンジャナイ？ジャナイ？！」という投げ遣りな部分の歌詞には触れないで下さい)。
さて、この歌の歌詞に同調するが、本当に世の中思い通りにならないことが多い。もっとも、思い通りに行き過ぎるとそれを当然のこととして認識するのが人間なので、考えもなしに同調してもそれはただのお追従にしかならない。ダンエモンが注目したいのは腐らないことである。
理屈としては誰もが理解していながらついつい感情の流れの中で忘れ勝ちになることでもある。「グレたって社会は変わらない」、「ひとりきり考えても答えが出ないときは出ない」、「追いかけてくれるのは時間と現実だけ」といった歌詞は腐っても始まらないことを主人公が十二分に理解していることを示しており、その為に何が大切なのかということがタイトルの「ガンバルシカナイジャナイ？！」に繋がることを納得させてくれる。
世知辛い世の中ではとかく結果でしか人や物を見てもらえないことが多い。だが、結果が出なくて一番悔しいのは云うまでもなく努力している本人である。努力の成果がすぐに現れることには誰でも頑張れるし、さほど苦にもならない。見えない結果の為に、いつ現れるかわからない結果の為に努力するのはそれこそ大きな努力を要する。努力それ自体に意義を見出すことができるかできないかはあらゆる努力の根幹になる。茨の道を何故選ぶのかに迷った時にこの歌の歌詞を思い起こしてみることが一つの糧になることを願いたい。いささか説教臭くなったがこれをもってこの解説の締めとしたい。
令和四(2022)年六月五日 最終更新