がんばるリーマン!

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 山本直市郎

解説 真夜さんの9thアルバム『seasons』の7曲目に収録された、既婚男性サラリーマンの立場で歌われた極めて稀有な存在である。
 いわば家庭と職場の狭間で報われない様でも大切なものの為に戦い、頑張るサラリーマンへの応援歌である。

 歌詞内容とは全然関係ないが、個人的にはサラリーマンの略語である「リーマン」という言葉が好きではない。会社につとめ、雇用者から給料=サラリーを貰って生計を立てるサラリーマンは世の就業者の大勢を占めるわけだが、サラリーマンという言葉自体が、ビジネスマンや会社員といった単語に比べて軽んじる響きを持つ上に、それを略した「リーマン」という言葉には凡そ敬意というものが感じられず、この歌の歌詞でも「比例しない苦労と給料 それが僕らリーマン!」と歌われているように何処か自嘲気味だ。
 かく言うダンエモンもまた「リーマン」である。まあ、ネット上で初めてダンエモンを名乗った時(2000年10月)や、楽曲房を立ち上げた時(2001年11月)などは定職にさえ就いていなかったが(苦笑)。

 上記の自嘲ではないが、「正論は飲み込んで 黙れば縮まる寿命 悲しき仕組みだな 溜まるストレス 溜まる 書類」の歌詞に見られるように、とかく一般のサラリーマンのイメージの如く、会社にこき使われ、上司の顔色を伺いつつ、勤め続ける描写が随所に見られる。
 一方で、「家族」「カミさん」「マイホーム」「アフター5」、の為に辛い勤めに耐えつつも頑張っているのも一般的なサラリーマンのイメージと言える。

 前言を翻すようだが、この曲の注目すべき点は応援歌としての点ではなく、決意表明としての点である。
 応援歌的な要素はあっても、この曲は同病相哀れんだり、傷を舐め合ったりする弱者の馴れ合いのような歌では、決してない。「最高の1杯が待っている! カミさん 今日も愛しているよ!」「不服はあっても 今も胸にちゃんとあるんだ あの日の熱い想い!」とあるように、ささやかな一時の中に自分だけの時間と世界と伴侶を持ち、組織に属する前からの想いを持ち続ける、決して世の中のその他大勢で終わるまい、との意志を漲らせている。

 家庭、社会的地位、大金、は大切なものだが、それらを維持するには努力も配慮も束縛も義務も責任も必要である。これらを欲しなければ妥協と奔放と開放と自由と権利に恵まれるだろうけれど孤独でもある。
 人間には何者にも縛られない自由もあれば、自らの自由より大切な何かのために縛られてもそれを欲する自由もまた存在する。2009年2月現在、ダンエモンに「カミさん」はいないが、「カミさん」の為に戦える男であろうとの気構えは持っておきたい、と自らに念じている。


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平成二三(2011)年三月八日 最終更新