作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 Larry Honda
解説 アルバム『POSITIVE SPIRAL』の9曲目に収録されたこの曲はリズミカルな曲調の中に様々な想いが内包されている。
同アルバムの初回特典DVD 収録の「セルフライナーノーツインタビュー」では曲調については、「最高テンポ」、「メロコア・ビートロックの全盛期」の時代にデビューした自分の想いとともにあることを、歌詞に関しては「本当に頑張らなきゃいけない時に(背中を)ドンと押してくれる」もの、と述べている。
「GO☆」のタイトルの如く、大黒摩季版Going My Wayとも言える曲で、タイトルが「Go」の歌詞に溢れた「この闇を突き抜ける」や「Go with the wind」や「Go your way」を彷彿とさせるが、純粋に前に突き進むことを叫ぶ意味においてはこの「GO☆」程徹している曲も珍しいのではあるまいか。
と言うのも明らかに男である主人公には幾ばくかの躊躇いもあり、その躊躇いを振り切るように「GO!」と叫んでいるのだから。
「流行のバッグを見つめカワイイ君 「次いこっか…。」と切ない瞳 待っててよ 次の誕生日はサプライズ 無邪気な願いを叶えよう」や「たまの休みには爆睡 遅刻のDATE VIBEにしてたと言えば 「一人なのになんで?」ってOH〜NO, NO, NO」の歌詞から推測するに、主人公と「カワイイ君」とはそれなりにデートをし、日常的に顔を合わせ易い立場にもあるのだろう(おそらくは大学生か、専門学校生)。
だが、一方で、「携帯にINTERNETつながりすぎな僕ら 半日電池が切れるだけで不安な愛はもうサイコサスペンス」のような盤石とは言い難い仲と見える。それゆえに主人公は「次の誕生日はサプライズ 無邪気な願いを叶え」る為に「引越ししたいなんて嘘」をついてまで「真夜中のバイト」といった涙ぐましい努力もするのだろう。
それを考えると真意が見えないとはいえ、「ゴキゲンとられてカシスウーロンでHIGH 人の気も知らないでおき楽だよなぁ〜」な「君」に同じ男性として些か腹が立つ。
物で釣ったり、という訳でもないだろうし、尽くされたからと言って応えなきゃならない義務があるわけでもないが、それに有り難味を感じず、何とも思わない女は本当に腹が立つ。
極論を言えば、「何で親切なの?何か企んでんの?」と警戒されることで本当にない見込みなら拒絶・粉砕されて白黒はっきりさせる方がまだマシなのでは?と思う時がある。
主人公がダンエモンと同じ考えかどうかは定かではないが、前述したように主人公に迷いが皆無な訳ではなく、その躊躇いは「実はさ僕にも悩みがあったんだ このまま他へ行くべきか」や「あのコガ悪口言ってどうのこうのより 深く一生のことなんだ」といった歌詞に見られる。
だが、主人公の望みは最初から決まっている。タイトルが答えである。
そしてその望みの基となる意を示す歌詞が「君に出会うまで 何もかもが半端で やり抜けたのはGAMEぐらいで 歴代の彼氏の話しを聞けば そう変わんなくて負けたくなくって “男になる”と決めたんだRESPECTされたい頼られたい 本当に必要な存在になりたいんだ」である。
横恋慕を重ねてきた道場主は、彼氏の存在ゆえにいくつかの恋に破れて来た。まぁ、彼氏がいなかった所で上手くいかなかった可能性は濃厚だったのだが……イテッ!(←道場主のマッハパンチを食らったらしい)…惚れた相手が自分のものにならない悔しさに次いで、同じと男として彼氏に勝てない悔しさもまた大きかったから、「歴代の彼氏の話しを聞けば そう変わんなくて負けたくなくって “男になる”と決めたんだ」の部分には心底共感する。
また、「恋愛とは須く一方的なものであってはならない。」との信念や、「恋愛も友情も互いに敬意を持って接しなくてはならない」との自戒からダンエモンは「RESPECTされたい頼られたい 本当に必要な存在になりたいんだ」との歌詞は心に深く刻まなくては、とも思っている。
全然話が逸れるが、『特捜最前線』という刑事ドラマで、長門裕之氏演ずる窓際軽視・蒲生大介は「本当に辛いことは嫌われることなんかじゃない、必要とされなくなることだ。」と言っていたが、確かに対人関係とは片方がもう片方を必要としなくなった時に真の終焉を迎えるものなのだろう。
余談だが、かつて道場主の従妹にストーカーを働いた男は従妹に「悪いところがあったら直すから!」と言って交際を迫ったらしいが、「必要」とされてなかった上に「害悪」と見做された段階で単純な長所短所の問題じゃないことを気付かなかった所にこの男の愚行があったのでは?と10年近い時を経て思う(ちなみにその男は道場主が脅しと国家権力の協力で退散させ、従姉はその後幸せな結婚をした)。
サビの部分の「今は GO!」の「今は」には躊躇いを振り切らんとする自らへの呼びかけが見られるが、「愛をGO! 手に入れるまで 行くゾ!! GO!!」が「愛をGO! 手に入れたなら 明日へ!! GO!!」となった時に主人公の「「RESPECTされたい頼られたい 本当に必要な存在になりたいんだ」という望みが叶うと信じて、一途な願いと叫ぶ声に野暮な言葉話に応援したい意を記すことでこの曲の解説を締め括りたい。
摩季の間へ戻る 平成二〇(2008)年二月二五日 最終更新