Groove On 〜脱いでごらん〜

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 河野圭

解説 アルバム『POSITIVE SPIRAL』の2番手として収録。いきなりだが、手元の英和辞典を引いても「groove on」を引いても出てこない。
「 in the groove 」で「最高調で(の)、 最新式の、 実にうまく演奏する(された)」という意味をもつので、「Everybody Groove」に用いられたのと同じ意味=「絶好調」だろう。

 「週末の夜のDate」を舞台に、サブタイトルに「〜脱いでごらん〜」とあるように「アンバランス」「Harlem Night」で歌われたように、欺瞞・虚飾・見栄という名の外套を脱ぎ捨てた裸の心での生き様への誘いが溢れている。

 注目すべきは主人公が相手に対して挑発的とも取れる誘いをかけていることで、その意は「温かい場所に連れ出すわ」「私に流されてみない?」「理性を脱いでごらん」と、歌詞の随所に見られる。

 「熱い太陽に心乱れて 戸惑う少年 見たい」「沸き立つ野生にまかせて 危険な君 見たい」「完璧に憧れても不完全さに母性は惹きつけられるもの」やといった歌詞からも、シチュエーション的に年上の女性が「少年」とも言える恋人をリードする様がみられ、お姉さま的存在に甘えたがる趣味を持つ道場主がうっとりしてにやけて……ぐえええぇぇぇえ(←道場主にハイジャック・バックブリーカーをかけられいる)。

 一見、アルバム『POSITIVE SPIRAL』に反するような暗い歌詞が綴られているように見えるのだが、決して『SPIRAL』に偽りはない。
「凍てつく街 不安な時代 過剰に着込むTheory 間違いのないことにしか 乗り込めなくなっている」と表わされるようなシチュエーションに「どんな人とどんな恋をしてきたのか見えないど 完璧に憧れても不完全」から抜け出せず苦悩する相手だからこそ、「理性」「Pride」をも捨てて突撃するよう盛り上がりを伴って絶頂=「groove」を叫ぶ動きこそが、堂々巡りをしているように見えてもその実、上向きのベクトルを進む『SPIRAL』を見事に描いている。

 部分的に見て好きな歌詞は「ロジックより女はロマンティック Let’s move」「温かい場所に連れ出すわ」である。
 前者は普段男性より女性の方が理知的に見えても本能や感情といった根の部分でいざとなると「母性」という、否も応もない、理屈で測れない強さを持つ点を、改めて成程と思わされた。
 後者は「凍てつく時代」の対称としての「温かい場所」「OVERDRIVE」を彷彿とさせられた。

 尚、同アルバムの初回特典DVD 収録の「セルフライナーノーツインタビュー」では摩季さんはこの曲を、自分の中の「江戸時代ぐらい昔から蔵出し」してきたような、「アシッド系の時代」の曲としている。
 逆を言えばだからこそデビュー以来連綿と積み重ねられてきた、逆境の時代に理に囚われず自分らしさを貫く大黒摩季イズムが静かに、そして確実に綴られた出来となっている、古くて新しい曲であると言えよう。

 「どんな人とどんな恋をしてきたのか見えないど 完璧に憧れても不完全さに母性は惹きつけられるものよ 私に流されてみない?」       流されてえぇぇぇぇぇぇぇ!!(笑)


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平成二〇(2008)年二月一二日 最終更新