始まり
解説 解説 椎名恵さんの16thアルバム『Tell me』の6曲目に収録されている。個人的に同アルバム収録曲中「強い椎名ソング」の二大双璧と思っている(もう一曲は「Angel tell me」)。
いきなりだがこの曲の歌詞の「どんなに泣き疲れても 愛だけは失くせなかった」は大好きである!!。特に「失くせなかった」が人間の可能性や愛というものを信じるのに与えてくれる力に素晴らしいものを感じるのである。
世の中には心ならずも失われてしまう「愛」もある。主人公が「失くせなかった」と語る所の「愛」は正確には「愛は誰の心にも 息づいているでしょうね」と歌われるような人間が誰しも持ち得る、愛する心のことであるのは明白だが、それが「失くせなかった」、つまりは如何なる逆境にも負け様がないと言うことの素晴らしさに勝てる歌詞は早々見当たらない。
別の視点で見るのに直後の「孤独より寂しいのは 愛せなくなる事だと 知った」と併せて見たい。世の中には「愛」を忘れてしまった、「愛せなくなる事」に陥ってしまったとしか思えない人間(凶悪犯罪者・愛を踏み躙る冷血人間)も残念ながら存在するが、逆を言えば「愛せなくなる事」がない限りは罪を犯そうと、世間から後ろ指を刺されようと、本当の「孤独」にはならない、誰かの「安らぎ」でいられると言うことでもある。
核心をいきなり直撃する形をとったが、勿論これは歌詞が語る所の主人公の経緯にも大きな意義がある。
主人公は「いつも気持ちをとがらせて 終らせてきた」様な恋の果てに「泣き疲れ」たり、「孤独」に陥ったり、「生きてゆけない」思いをしてきたが、心のどこかに「愛」をなくすことなく持ち続けてきたから、今「あなたのやさしい気持ち 大切にしてゆくから」と思い、「私が安らぎに なりたいと感じてる」人と寄り添う事で幸せの「始まり」を実感している。
反省も決意も喜びも「愛だけは失くせなかった」事に起因しているのが素晴らしい限りである。それを踏まえて見ると「明日を一人では 生きてゆけないわ」が決して弱気から出るものではない事が理解でき、それに続く「女にはその弱さと強さ 切り離せないものだから」の歌詞の持つ深い含蓄に驚嘆させられる。
何故「弱さと強さ」が併存するかの意義を考察するのは「愛」を考える上において、この曲のみならず大いに大切な事だとダンエモンは思う。
2004年12月15日、東京渋谷でのライブにてダンエモンは自分の2メートル眼前で歌う椎名さんの口から始めてこの曲を聴き、当時『Tell me』を所持してなかった事から知らない曲の登場に悔しい思いをしたが、今なら椎名さんから直接聴いたのが最初でアルバムで聴き直すことでその魅力が再確認できることに大きな喜びを覚える。
万事において「始まり」は大切であるが、何故にそれが生まれるかを重視することでありとあらゆる努力に意義を持つことの大切さをこの曲に教えられた。失くしたくない、ではなく「失くせな」いものを今後の人生において重視し続けたい。
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