離れていても

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 西垣哲二

解説 岡本真夜さんの21thマキシシングル「旅人よ」のC/W曲で、AiM(声優・前田愛さんの歌手名義)に提供された楽曲である。
 タイトルに「離れていても」とある様に、今現在側にいない状態にある想い人=「君」に対して会いたい気持ちと、共にいなくても一人でも頑張れることを主張した歌詞になっている。

 冒頭に「「大丈夫。」 泣かないよ 泣かないよ 約束したから」とあることから、主人公は最初強い人間ではなかったのだろう。それを「君」と出逢い、愛し合い、苦楽を共にしたことで「負けないように うつむかないように 君との約束 握りしめるよ 君がいるから 心にいるから離れていても歩ける」と断言出来るまでに強くなったのだろう。
 主人公と「君」とが如何なる事情があって、どんな形で今一緒にいられないかは詳らかではないが、少なくとも仲違いによる別れではないだろう。
 物理的には「離れていても」「君がいるから 心にいるから 離れていても歩いて行くよ」「出会えた事が二人の想い出が 今もこの先を照らしてくれる」とあることから精神的な結び付きが強固であることに疑いの余地はない。
 名曲「DREAM」にも似た歌詞があるから何となく嬉しい。

 個人的に注目する歌詞は二つで、一つは「何か足りない日々が続いても どこかに光があると信じて “あたりまえ”などないこの世界で 強くいられる勇気をくれたね」である。
 これは、特に前半は誰しもが多かれ少なかれ幾度となく抱く想いだろう。この世に絶対と云えるものの存在は極めて稀である(人によっては皆無というだろう)。だがそれでも、否、そうだからこそ人は絶対的なものを求めてしまうし、希望を抱きたがる。だが、目に見えないものを信じるのはなかなかにきつい。そんな世界であるこの世にあって、「強くいられる勇気をくれたね」と云い切れるのは相当な信頼と絆の強さである。成程、距離的な別離など歯牙にも掛けない訳である。

 もう一つ注目歌詞はラストの「出会えた事が二人の想い出が 今もこの先を照らしてくれる 会いに行くから 会えたその時は 夢の続きを話そう」である。
 上述した様に主人公と「君」が今現在共にいない理由と別離状況は詳らかではない。だがこの歌詞から主人公は「君」との結び付きのみならず再会も確信していることが分かる。殊に「会いに行くから」という意志の現れが心地いい。
 ここから思うに、主人公と「君」は各々の夢を追うが故に共にいられない状態にあるのだろう。そして夢を叶えた暁にはまた一緒にいられるようになるのだろう。
主人公の確かな強さの中に「本当はそばにいてほしいけど」という本音が見え隠れしていることは、微笑ましく映っても、決して弱音とは映らない。傍目に見ていて両者が再会する日が一日でも早いことを応援したくなる曲である。


余談 特撮に興味のない方にはピンと来ない話だが、道場主の分身の一つである特撮房シルバータイタンの立場から見れば、この曲は『ウルトラマンA』の主人公である北斗星司(高峰圭二)と南夕子(星光子)が思い起こされた。
 当初男女二人が合体する様にウルトラタッチというアクションを交わしてウルトラマンAに変身していた訳だが、話の途中で夕子が月星人であることが明かされ、夕子は宿敵ルナチクスを倒したことで仲間の下へと帰って行った。
 この時夕子は星司に「二度と会うことはないでしょう。」と述べた(実際は作中でこの後二度会っているが)。この別れに対して、星司は40年近い時を経た後に後輩である『ウルトラマンメビウス』にて夕子が例え離れても常に心の中にいたことを吐露していた。そしてこの話のラストで夕子が現れ、彼女もまた離れてはいても心の中に常に星司がいたことを述べていた。

 同作品にて当初星司と夕子の間には恋愛感情があったことも仄めかされたが、結局それは明らかにされなかった。だが、恋愛感情の有無はともかく、永遠の別れを告げた相手に対して「常に心の中にいる。」と断言出来る者は決して多くないだろう。
 ダンエモンも性別・恋愛感情・血縁を問わず様々な別れを繰り返して来た。中にはもう二度と会わないものいよう(既にこの世を去った人もいる)。だが心の中に間違いなく存在すると云い切れる存在は一人でも多く持ちたいものであるし、自分自身もまた一人でも多くの人の心の中に存したいものである。


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令和六(2024)年五月日 最終更新