春風

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 建部聡志
解説 岡本真夜さんのミニアルバムW o n de rf ul C o l o r sの第3曲目に収録。
 1曲目の「星になるまで」同様、過去の恋を振り返る曲なのだが、ダンエモン的には「泣けちゃうほど切ないけど」「想い出にできなくて」がダブる。

 タイトルの「春風」の如く、柔らかく温かな日差しや花香の流れにも似た雰囲気が詞・曲ともに溢れている訳だが、主眼は季節感にあるのではなく、その季節に「誕生日」を迎える、今は別れてしまった「あなた」への想いにある。
 愛する人の「誕生日」を祝う真夜ソングにはそのものずばりとも言える「ハピ ハピ バースデイ」があるが、この曲の場合は忘れ得ぬ過去の想い人を懐かしがる点からも「想い出にできなくて」が彷彿とさせられる。

 殊に「突然 思い出した あなたの誕生日って 忘れていたはずなのに 大事なような そうでもないような 遠い記憶」の歌詞には「あなた」との日々が過去のものであって過去のものでないような、今も変わらぬようであって今は昔とは違うようなつかみ所のなさがなくした恋の切なさをより一層のものにしている意味においてこの曲のコアと言えるだろう。

 直接会って言えないからこそ、せめて「春風 届けて あの人のもとへ」と托したくなる気持ちは実は恋愛経験が少ない筈の道場主にも理解できたりする。
 実の所、IT技術の差にもあるが、道場主は愛した相手に愛している時の誕生日に祝福の言葉をかけれた経験が極めて少なく、直接会って言った相手は初恋の人にまで遡らなくてはならない(事情は様々なのだが)。
 だが、未練人間である道場主は…いてっ!(←道場主のエルボースタンプ炸裂)…毎年必ずと言っていいほど過去・現在を問わず想い人の誕生日は思い出し、直接祝福できない気持ちにもどかしさを感じる。
 そしてそれはメールなどが発達した現代であっても立場や情報からも不可能である故にもどかしさも倍増する。はっきり言って、単なる知り合いの女性の方がメールなり、口頭なりで何倍もの人数祝福している事実に比してもどうかと思ってしまう

 個人的な愚痴は置いておいて、もう一点注目すべきは「小さな恋なら 時々あるけど どこかであなたと 比べてしまうの あなたに恋した あの時のような 泣きたくなるくらいの恋は も少し先だな・・・」の歌詞である。
 つまり主人公は「あなた」と別れた後に恋をしていないわけではないのが一目瞭然なのだが、本気度において「あなた」とのそれとは比べ物にならないのだろう。
 冷たい言い方をすれば「あなた」との後に恋した相手が「あなた」に勝っていれば、「あなたの誕生日」にここまで複雑な想いは抱かないだろう。
 「泣きたくなる恋」とはまたその実像が掴み難いが、少なくとも感情面においてもかなり強いものがあったのだろう。
ラストの歌詞に「あなたに恋した あの時の気持ち 大切にしたい それぐらいいいよね?」とあり、「星になるまで」同様、どこか遠慮がちなものを感じるが、願わくは主人公の未来に遠慮しつつも振り返る過去に捕われない、「春風」を越えた真夏の嵐の如き燃える恋でもって「あなたの誕生日」を忘れるぐらいの幸福が訪れて欲しいものである。

 

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