作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 Ryota Asai
解説 摩季ネェの15thアルバム『PHENIX』の12番目に収録されている。立ち上がることを呼び掛けているという意味では同アルバムに収録されている「SISTER💄SISTER🌹SISTER💋」と似ているが、呼び掛けている対象はこの曲の方が幅広い。
冒頭部で、「世界は、日本は、これからどうなるの? 息をひそめ怯えたまま生きるの? 新型コロナは進化を続けていて ただ 科学者任せで時を待っている だから一層 長いんだ OVERTAKE THE TIME」と憂いているようにこのアルバムが出た年(令和2(2020)年)、新型コロナウィルスのパンデミックが地球規模で起き、早々にソーシャル・ディスタンス、三密の忌避、手洗い・うがいの励行が叫ばれたのも空しく、多くの死者が、その何百倍もの感染者が出てしまった。
当然、多くの人々が集まるイベントや集客が自粛され、夏の高校野球大会が中止され、東京オリンピックまでもが延期された(翌令和三(2021)年に何とか無事開催)。この解説を綴っている令和6(2024)年11月7日現在、世の規制はかなり軽減され、パンデミック発生当初に感染者が丸で汚物かの如く白眼視された傾向もかなり収まった(道場主の勤める会社でも罹患したことのない人間の方が稀少で、道場主の母・妹・義弟・甥も感染した)が、完全な終息はいまだ慣れていない。
当然初っ端である令和2(2020)年のパンデミックに伴うパニックは社会的・産業的・経済的打撃も大きかった。殊に芸能界では集客を伴うイベントが次々中止されたため、アーティストは勿論、会場関係者もかなりの打撃を受けたのは想像に難くなく、芸能人の中にも駆け出し等で名が売れていない為に印税などの収入の道が小さい物の中には廃業を余儀なくされた者も少なくなかったと思われる。
脇の話が長くなったが、かように外出を伴う活動自粛により、多くの人々が多かれ少なかれ縮こまるような生活を余儀なくされた訳で、この曲がタイトルを初め歌詞中でも何度も「走れ!走れ!走れ!」と連呼しているのにはそんな世相を振り切って立ち向かわんとの戦意を感じるのである。
アルバムに添付された歌詞カードではこの曲の歌詞が記載された隣の頁に摩季ネェの顔が一面アップで掲載され、そこに「私は 戦う」という文字が記載されている。実際、この曲でも「我武者らに」とか、「GOALまで」とか、「全力で」とか、「TARGET絞って」とか、「迷わずに」とか、「POLE POSITIONまで」とか、「真っ直ぐに」と云った、勝利に向かうのに、目標的に大切な要素となる歌詞がふんだんに盛り込まれている。
また「走れ!」以外にも、「掴め!」、「届け!」と云った命令形での呼び掛けも見られるが、「HEY ! BOYS & GIRLS !! COME HERE ! FOLLOW ME ! I BRING YOU TO A NEW WORLD. THIS IS THE BEAUTIFUL WORLD. NOW ! UPSTAIRS TO A WONDERFUL WORLD HOW DO YOU FEEL ? LET’S GO !!」とある様に、共闘を呼び掛ければこそである。
ただ、見落としてはいけないのは、この曲の歌詞が端に大将面して多くを率いて悦に入ることを目指したものではなく、人間誰しもが持つ本音に呼び掛けていることである。
「息をひそめ怯えたまま生きるの?」や「科学者任せで時を待っている だから一層 長いんだ」や「そんな前向きな朝もあるけど どこかで 全部 負け惜しみよって 滲むPURPLE RAIN」と云った歌詞には「縮こまっていて良いのか?それで悔しくないのか?」と云わんばかりのプライドに訴えた呼び掛けも見られるが、コアにあるのは「どんなことに巻き込まれても私たち 望まず 愛さずにはいられない」、「どの道どこかで何かを失くすなら 今を、今日を、悔いなくいたい だから 出し惜しみしてた勇気出して 伝えよう 本気の「好き」 GET THE CHACE☆彡」、「誰か「ここから連れ出して・・・」 待っても来ないから MUSIC♪」、「抜け出したい 追い越したい 自分を使い果たして終わりたい」という、「そうせずにはいられない!」との想いで、周囲に呼び掛けつつ誰よりも主人公が強く抱いていることであろう。
勿論どんな強い想いや決意を持っていても、必ずしも成功するとは限らない。だがこの曲には結果以前に「全力を尽くさないまま終わっては悔いが残る。」との想いが伝わってくる。それを表してか、アルバム添付歌詞カードにある摩季ネェが出て来る最後の頁にはアップ写真に「自分を使い果たして終わりたい」というこの曲の歌詞が書かれている。
走り続けることは決して容易ではない。時にはインターバルが必要である。また夢に破れることは誰しもが経験すると思うが、再度立ち上がり、次の夢に向かい、何より生きている限り力を尽くし続ける姿勢は持ち続けたいものである。
摩季の間へ戻る 令和六(2024)年一一月七日 最終更新