Hello

         作詞 Lionel Richie 作曲 Lionel Richie 日本語詞 椎名恵
解説 岡本真夜さんのフォース・アルバム……あ、いや、失礼。くだらん冗談は置いといて、椎名恵さんの14thアルバム『TOY BOX』の7曲目に収録。ライオネル=リッチーが所属するコモドアーズの1984年のヒット曲に椎名さんが日本語詞をつけてカバーしたものである。
 同アルバムの歌詞カードにある椎名さんのコメントでは「何だかとても悲しいメロディーなのに、タイトルは「Hello」。曲中の「Hello」の一節だけで、もう泣けてくるのです。」とあるように歌詞もさる事ながら、曲調も凄まじいまでに物悲しい。
 歌詞を見るに、恐らく主人公は「あなた」に胸中の想いを告げられずに居るのだろう。「その心が悲しい想いに 二度と壊れてゆかぬように 両手を広げて強く静かに あなたを見てる」という歌詞には想いを告げることで「あなた」に不快を与えていることを恐れているかのようである。
 別の視点も存在し得る。それは「今のあなたが独りで居ても 誰かの肩を抱いていても」とあるということは主人公は以前を知っているという事であり、以前二人が愛し合っていたことも推測できる。そんな以前に何か破局的なことがあったからこそ、「あなたを見てる」しかできないのでは?という仮説である。
 どちらにしても主人公の具体的な行動に起こせない背景も寂しさを増大させるのに一役買っている。
 前述の椎名さんの指摘にあるように「何だかとても悲しいメロディーなのに、タイトルは「Hello」。」とあるのは言葉や形や態度に出来ない想いがせめて日常の挨拶である「HELLO」の様に当たり障りなく「あなた」の心に届いて欲しい、との想いがあるからではないだろうか?「この一言が伝わるように 風にたくすよ I LOVE YOU」とあるように決して面と向かって言えず、自然の雰囲気の中に託さなくてはならない言葉であるゆえに。
 自慢じゃないが道場主はかつて惚れた女性には必ず告白した。そして恥ずかしながら告白したが故に二度と面と向かって話し合えない間柄になってしまった人もいる。この歌の主人公の様にその人を今は愛してはいない。自分と重ね合わせるわけではないが、万人にいつまでも失恋に捕われて欲しくない、との願いが道場主にはある。想い続ける一途さが悲劇でしかないなんて余りにも悲し過ぎるから……。


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