ひとりぼっち

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 河野圭

解説 摩季ネェのアルバム『すっぴん』の8曲目に収録。帰って来る家族の為に家庭を整える点が「あのバスに乗って」を、温もりが有りながらどこか孤独を感じさせる点が「SLOW DOWN」を彷彿とさせる一曲である。

 主人公の立場を推測するに、専業主婦に近いものがあると思うのはダンエモンだけだろうか?サビの「愛の中にいるのに 幸せなはずなのに ひとりぼっち 公園の隅に取り残された子猫のようだわ」「迷ってはいないのに 自分で決めたのに ひとりぼっち バーゲンのモールでママと逸れた迷子のようだわ」等の歌詞を見ると、人によっては「何を贅沢言ってんの、この人?」と言いたくなるかも知れない。
 だが、何となく主人公の気持ちは分かる気がする。主人公の心を苛んでいるのはタイトルに歌われているように「ひとりぼっち」と言う孤独感だろう。それも心因性の。

 恐らく主人公の夫(と思われる)「あなた」「日々と戦っている あなたには言えなくて ひとりぼっち 夢見ることも諦めることも出来ずただ泣くだけ」それなりに忙しく、仕事を家庭に持ち込まない人なのだろう。逆に主人公は心の内を「あなた」に告げられず、そこに疎外感を感じ、見た目には幸福な家庭の中にありながら、精神的な孤独に囚われているのであろう。

 ただ、それでもダンエモンはこの主人公に救いがないとは思わない。終盤で主人公が「今夜はあなたが笑ってくれるように あったかいスープを作ろう」「今夜も笑顔で上手な嘘をつけるように やわらかいアロマでも焚こう」と自らに言い聞かせているように、愛する人の為に何かをしようとしている訳だから「ひとりぼっち」を嘆きつつも、失いたくない家庭を、愛し、愛される対象を持っていることに間違いはない。
 寂しさを感じつつも、失いたくない確かなものを持っているから家事に勤しむ姿は「未来が私を呼んでいる…」にも通じるものがあると思うのはダンエモンだけだろうか?

 とまれ、曲調も決して明るくはないのだが、主人公には孤独を解消する道は充分に残されていることでこの歌の歌詞は先行きの明るさまでは否定しない。そして孤独を解決する手段は見えている。ズバリ、主人公が「あなた」に心の内を告白することだろう。まあ事情が分からないから言うほど簡単ではないのかもしれないが。

 尚、アルバム『すっぴん』初回限定盤付属Disc2に収録されている「セルフライナーノーツインタビュー」によると、この曲は「It’s All Right」の締め切りに追われている時にポロッと生まれた」とのことで、摩季ネェ曰く、「Stay with me baby」「Lonely Child」「START LINE」等の絶賛された曲も同様に「ポロッと生まれた」そうである。
 このような生まれた方をした曲ほど、散々考えて出来た曲よりも出来は良いらしく、この要因を摩季ネェは伊集院静氏から聴いた話を引用し、「脳も心も動いているとき」に生まれるそうだが、そのことは散々作詞・作曲を重ねて来た摩季ネェにも全く予測不能で、いつ来るか分からないインスピレーションに対して「母体が大事」「偶に地球に降って来る隕石」というイメージを持っているらしい。
ともあれ「キム・ヨナさんの演技の様な」を意識して作られた曲の二作目であるこの「ひとりぼっち」 (ちなみに一作目は「Forever Rose」)は誰もいない「当たり前の孤独」とは違った、「有る中の孤独」「真の孤独」としてつくったとのことで、特異なように見えてこれまた「Calling You」同様に「誰にでもあること」としていた。

 最後に摩季ネェは「独りでなくと本当に寂しいから、この「ひとりぼっち」を聴いて私と一緒に泣こうね〜。」と呼び掛けていた。でも、摩季ネェが眼前にいたら別の意味で泣きそうである(※この文章を書いている2012年3月8日現在でダンエモンは摩季ネェと1年4ヶ月チョット摩季ネェと顔を合わせていない)。


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平成二四(2012)年三月八日 最終更新