ひとりになりたい

         作詞 椎名恵 作曲 熊谷幸子 編曲 勝又隆一
解説 椎名恵さんの10thアルバム『蒼の時刻』の2番目に収録されている。冷淡な恋人と別れた直後の解放感を歌った歌、と評するのは言い過ぎだろうか?
 『蒼の時刻』
の収録曲は喜びに溢れた歌と暗い歌が両極端なのだが、その双方に前向きになるための決断が見られる。この「ひとりになりたい」もタイトルこそ願望型だが、「ひとりになれて何倍も 幸せだから」「不思議ねひとりになっても 寂しくないわ」に見られる様に歌詞内容はもう既に別れた後である。
 とかくこの歌には虚無感が漂っている。主人公の「気まぐれな電話を朝まで待つ」「料理の本だって 何冊も買ったわ」といった涙ぐましい努力に「あなた」が全く答えた形跡が無いのだ。
 「悩みも束縛も あなたに返してあげる」とあるが、おそらく「あなた」には束縛したり悩ませた、と言う意識さえないのだろう。そしてそんな何も無い様が主人公にとって最大の「寂し」さであり、「悩み」だったのだろう。むしろ叱られるぐらいの方が幸せだったのではなかろうか?
 「好きだとは一度も 言わなかったくせに 抱かれた夜数えたら とても空しくなる」という歌詞には、「あんたらどういうカップルなんだい?」と問いかけたくなるほどダンエモンには分からない世界だが、推測するに本能が求める形だけのカップルだったのだろうか?
 ともあれ主人公はそんな恋を捨てる道を選んだ。正解だと思う。主人公の行動に対し、「あなた」はあまりにもリアクションやレスポンスが無さ過ぎる。愛とは見返りを求めるものではないが、形は無くとも情は双方向の筈であるのに少なくともこの二人が愛し合っているとは言い難い。
 「ひとりになれて何倍も 幸せだから」とは確かに寂しい結末だが、「心に曇ってた 憂鬱が晴れてゆくのよ」の気持ちがあるなら、捨てた恋に捧げた空回りの何倍もの意義を次の恋にて感じて欲しいと願われてならない。


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