星になるまで
作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 建部聡志
解説 岡本真夜さんのミニアルバム『W o n de rf ul C o l o r s』の第1曲目に収録。簡単に言えば過去の恋を振り返る曲である。
冒頭を初め、所々に出てくる「つれづれなる」の歌詞には日本三大随筆の一つである吉田兼好の「徒然草」を思い起こす人も多いだろう。彼の作の「つれづれ」とは異なり、連綿とした表現としての「つれづれ」はそれに続く「涙」からも明らかだが、それがタイトルでもある「星になるまで」という部分にかかることで、「いつしか花を そして恋を」や「いつしか花を そして夢を」と繋がる所が自然見えてその実、巧緻である。
恐らく「花」は「恋」や「夢」に咲き誇るもの、「星」の如く輝ける未来への願望を比喩した物だろう。
「サヨナラしてから ずっと」とあるように歌詞の背景として分かれてからそれなりの月日がたっていることがうかがえ、更にこの一文に含まれる歌詞と同名の「サヨナラ」を彷彿とさせるものがある。また苦しい別れを乗り越えて、思い出として昇華しつつもそれを重んじた上で未来に向かおうとの姿は「大丈夫だよ」に通じ、岡本真夜イズムが所々に滲み出ている点もファンとして嬉しい。
もう一つこの曲の歌詞について注目すべきは、主人公が「あなた」との日々に代わる「恋」や「夢」をまだ掴んでいないという点である。
別れの背景は不明だが、「もうあなたに 会えないかもしれないけど」とある事から、再会すら望み難い状況にあることから、主人公としても残りの人生に新たなものを目指さなくてはならない状況にあるのだろう。
さりながら「このcafeの前 あなたが通る時 思い出してくれるかな ふたりで過ごしたかけがえのない時間 ほんの一瞬でも ひとときでも」という遠慮勝ちな願望からもまだ「あなた」との思い出を放せず、それでも自らの想像にさえ相手の許可を求めるほど触れてはいけない何かの存在を仄めかす所が何とも切ない。
「星」は美しく夜空に輝き、その姿をはっきり見せながらも実際の距離は余りにも遠い。だが、つかめない筈の月に人類が到達した様に、「星」に擬えた「夢」や「恋」は決してつかめないものではない。
むしろ、もうつかめなくなった「あなた」との日々こそ新たな「夢」や「恋」をつかめることで本当の「星になる」のかもしれない。
「星になるまで」と言わず、「星」になっても主人公には頑張って欲しい物である。
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