I can say

作詞 椎名恵 作曲 松田良 編曲 見良津健雄
解説 椎名恵さんの12thアルバム『Cherish』の9曲目に収録。トリである「月のように」が極めてライトでかつ短い曲である事を考えると、実質はこの曲がトリと取れなくもない。
 一言で言い表すなら決意表明の歌。別の言い方をすれば、自分が思っている事を声を大にして言える(=「I can say」)、宣言できる、という意の歌詞内容になっている。
 歌詞内容からは主人公と「あなた」がどういう関係にあるかは掴み切れない。だが、どうも二人は恋人同士と呼ぶには些か距離があるようである。物理的にも心情的にも。「いつの日にか私だけ抱きしめて」「あなたと言う喜びを待っている」がその根拠となる歌詞だが、「傷ついても失くせない想いがある」という歌詞からは最悪、主人公は「あなた」に振られた直後、とも取れかねない。
 だが、苦難があればあるほど、主人公の「I can say」と誇らしげに宣する姿が光る。そんな意味でダンエモンがとくに注目したい歌詞が、「I can wait 変らないわ、私なら変れない」である。この歌詞に主人公の確固たる想いが凝縮されていると言えよう。
 「少しとまどった こんなふうに、またひとつ季節が 通り過ぎてゆく」という歌詞を見ると主人公は見込みのない状態で耐えて待つには年齢や人生の問題に置いて躊躇いもあるのだろう。だがそんな状況にあって「変らない」という決意に続けて「変われない」とまで言い切る執念的なまでの望み求める心がダンエモンの心を打つ。
 「〜しない」という気持ちを「〜できない」と置き換えてその強さを表す手法は後に「始まり」にも見られる(ダンエモンは「始まり」の方を先に知った)手法で、大好きである。何故に苦難に耐え(れ)るかの根本がそこにあることを改めて教えられる感覚も心地いい。
 最後に別の視点から触れるとこの曲はどこか「Ces't la vie」を彷彿とさせる。冒頭の「西の空はまだ薄闇の中 今力強く舞い上がる一羽の鳥」と、夜明けに飛ぶ鳥に自らの想いを重ねる所も似ていれば、「傷ついても失くせない想い」の人生における重さや、生きる上での不可欠なものとしている点もまた似ている。  「Find, この躰を今流れる愛は いつあなたへの道筋を知るのだろう Dream, その口唇、そっと触れてみたいと 夢つなげては悲しみを越えてきた」が切り離せない心からの愛がもたらされる想いであるからこそ、主人公には愛されるその日まで「I can say」と叫び続けて欲しいと願われてならない。
 

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