アイデンティティ

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 KONISHI TAKAO 
解説 大黒摩季のサードマキシシングルにして、2002年日韓共同開催のサッカーワールドカップ中継においてNHKでテーマソングとされた曲である。1996年のアトランタオリンピックのテーマソングにされた「熱くなれ」を彷彿とさせる存在である。アルバムでは『RHYTHM BLACK』の13番目に収録されている。
 「熱くなれ」同様に快活さと力強さに溢れた如何にも摩季ソングらしい摩季ソングである。何と言っても衆愚政治に陥り、真に自由な国と言えない日本、まだまだお殿様主義の抜け切らず、言いたいことが言えず、出る杭が叩かれまくる社会において、この「アイデンティティ」という単語はダンエモンにとっても大切な言葉である。
 さて、魅力的な歌詞が多く、何処から解説したものか困るのだが(苦笑)、まず流れから追うと、前途洋々の若者が出鼻を挫かれてそれを必死に挽回せんとする姿が浮かぶ。「DREAMER」「FIGHTER」「LEADER」「OUTSIDER」にそしていずれの立場に対しても「走れ走れ」「燃えろ燃えろ」「吠えろ吠えろ」「昇れ昇れ」と叫びかけているところにこの歌の魅力がある。思い切り感情移入するが、ダンエモンもまた「DREAMER」であり、「FIGHTER」であり、「LEADER」(傀儡だが)であり、「OUTSIDER」でもある。自分で書くのもなんだが、一流私大を卒業して、東京に出て、職を転々とする今のザマは正に「街を出た時は光るDREAMER 今じゃ日々と戦うFIGHTER」である。そういう状況で戸惑いながら生きる人間の迷いはこれまた正しく「ここで引き返すべきか 気が済むまで行くべきか」と言う歌詞が見事に比喩している。
 似たような迷いの様が「あぁ」「空」にも見られるが、この「アイデンティティ」の場合は完全に自分自身の問題でタイトルに即しているところが何とも言えない。
 さて、核心に触れてみたいが、何と言ってものこの歌の最大の魅力は個としての独立独歩を力強く感じさせることにあり、サビの「青い地球にたった一つの人生を この手でつかむ それがアイデンティティ」「深い宇宙に舞い降りた小さな愛を この手で守る それがアイデンティティ」にそれが見事なまでに集約されている。この歌詞を耳にする度に、「生きずにおるものか、戦わずにおくものか、愛さずにあるものか。」という気分にさせられる。うーん、快感である。
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