いじわる

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 アルバム『POWER OF DEREAMS』12曲目に収録。勝負に至らなかった行きずり(?)の悲恋を歌ったものである。たまたま少し早く出勤(登校?)しようとした地下鉄のホームで一目ボレした男性に対して、芽生えた恋を躊躇している内に相手が姿を消してしまった、と言う歌詞になっている。
 非難っぽくなってしまうが、摩季らしくない消極的な歌詞である。自慢じゃないがダンエモンは惚れて告白しなかった試しがない(行動の是非はこの際置いといて下さい)。自分を基準にするわけじゃないが、常に前向きでパワフルさを摩季に期待するファンとしては、勝負にすら至らず終わってしまったと言うのは些か拍子抜けがする。もっとも中にはそんな歌があってもいいのではないかとも思うが…。
 確かに車内で一緒になっただけの相手に対する恋が、互いに顔見知りの状態で、何がしかの付き合いがある中での恋とでは、ステップを踏むのに要する勇気も大きく違ってくるだろう。些か状況は異なるが、ダンエモンも全く会話をしたことなかった女性に告白したことがあり、そのときに要した勇気はその大きさもさることながら、異質さも忘れがたい。
 何と言おうか、剣道で例えれば、通常の告白が有段者に向かっていく勇気とすれば、ここでの告白はフェンシングの達人に実戦で向かっていく勇気とでも言おうか?(うーん、言っている本人にも何を言っているんだか…)。
 勿論主人公もただ手を拱いていたわけではない。「手紙を書いたり 番号調べたり」したわけだが、結局踏み切れなかった理由が「やっぱダメ モテそうでダメ 自信がないから」だとすると摩季ファンとしてはこの主人公に「もっと勇気出して欲しかった。」との不満が残る。
 この歌のタイトルは「いじわる」であり、その「いじわる」を密かに惚れている自分の気持ち=視線を想い人が気付いてくれないことに対して投げかけているのだが、「無茶言うなよ」いう気がする一方で、その気持ちもわからないでもない。機会があれば続編となる歌が聴きたいと望むのはダンエモンだけだろうか?
 最後に論じたいのが終末である。想い人は定刻に車内に姿を現さなくなった。ニ日を経て、「あぁ誰かにとられちゃったのかな」と結んでいるが、単に定刻から姿を消しただけなら、転職、転勤、出張、旅行、入院、死亡、車通勤への変更、etc、と幾らでも可能性は考えられ、恋人ができたからと言って通勤時刻が変わる可能性の方が低い気がするが、偏に踏み切れなかった自分を責める気持ちの表れだろう。
 もしこの想い人が再び定刻に現れることがあれば主人公はどうするか?非常に興味深く、その観点からも続編を期待したいものである。

摩季の間へ戻る