いけない恋
作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 西平彰
解説 大黒摩季さんのファーストバラードアルバム『weep maki ohgro The Best Ballads Collection』の第5曲目に収録。タイトルにもある「いけない恋」に対する主人公の葛藤・罪悪感・決意といった視点が興味深い。
敢えて悪い言い方をすると、この「恋」の何が「いけない」のかが極めて不透明だ。通常「いけない恋」と言えば、不倫・横恋慕・浮気・ストーカー的片想い…とこれ以上は詳しい例を挙げたくないのだが、冒頭の「いけない恋と 言わないように いけない恋と 思わないように」からして「いけない」の概念が絶対的なものではなく、相対的なものであるかのように思わせてくれる。
更に「いけない恋が 始まってしまったら いけない恋は 終わってしまうから」という一見矛盾するが故に考えさせられる歌詞や「いけない恋と 思えばきっと いけない恋と 泣けばもっと」といった歌詞からは進退多いに悩める姿も見逃せない。
だが一番の着目点は歌詞全体にどこか漂う子供っぽさではなかろうか?
「いけない恋と 思えばきっと いけない恋と 泣けばもっと 好きになってしまうから」には禁じられた事を敢えてしたがる好奇心の塊のような子供っぽさが、「いけない恋と 言わないように いけない恋と思わないように 無知な子供のフリをしよう」の歌詞には「無知」を特権とする子供ならではの狡猾さも感じられる。
そしてそんな子供っぽさ故にエゴと純粋さが程よく入り混じったコントラストが秀逸である。
自慢じゃないが道場主は横恋慕経験がン回に及ぶので自然と注目するのだが、詰まる所「いけない恋」の根底にあるのは「誰にも君を渡さない」と「今だけ時を止めて」の概念だろう。
背景は不明ながらもやはり主人公にとって想い人である「優しい君」は触れることは出来ても側に留める事は出来ない人なのだろう。そしてそれ故にかえって執着とともに「誰にも君を渡さない」の念が強まり、「今だけ」というささやかな接触に執着するのだろう。
全て道場主が経験してきた事だ(泣笑) 。
歌詞の中には大黒摩季ファンとしてのダンエモンの未熟ゆえか、「夏に憧れながら 諦めたあの人と 夏を置き去りにする僕は せつない同士」や「ささやかな未来へともう迷わずに 心からの作り笑いを あげられるだろう」のように今少し主人公の言わんとする事を解釈し切れない点も多いのだが、「いけない」を何とか「いけない」とは思わないようにしたい、だが心のどこかで「いけない」を嫌でも痛感させられているから最後の最後に「誰にも君を渡さない」の歌詞を出さざるを得ない点に注目する事でこの解説を締めたい。
せめて主人公に「優しい君」が「いつか溢れる涙を拭いて 愛のもとに帰ってゆく」までの一時だけでも、「いけない恋」の「いけない」要因を忘れられる事を祈ながら。
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