I'm all right
解説 椎名恵さんの15thシングル曲である。アルバムでは12thアルバム『Cherish』の7番目に収録されていて、道場主はベストセレクションアルバムで所持している。一つの恋を終らせ、人生リスタートを切ろうとしている決意を主人公が海辺で佇みながら夢想している内容になっている。
まず注目すべきは「さっきのあの船、もう見えない」や「思い切り小石を投げてみた 一度も跳ねずに波に消えた」といった、「海」ならでは情景に「確かにこの地球が丸いこと 何だか今さら気がついた」や「期待通りに事は進まない ましてや恋ならなおさらネ」といった当たり前の事を敢えて盛り込んでいることで、静かな時間が「抱えこんだ悲しみが嘘のように 消えてゆくのが分かる」、「明日からはきっと 私らしくなるから」という風に心の傷の癒しと自己を取り戻している点である。聞いていてるこっちもホッとする。解決の糸口さえ見えない歌も珍しくないゆえに。
次に背景を見てみたいが「彼の電話待つだけの毎日なんて 情けない話しだわ」という歌詞を見ると主人公と「彼」ははっきりと別れたわけではなく、「彼」の方が主人公を飼い殺しにしているようである。それゆえに主人公は「海」という雄大な場と「一日中」とたゆたう時間の流れで自己を振り返り、「明日からはきっと 私らしくI'm all right」という選択を取ったのだろう。重大な決断が大いなる自然の中で為されていることが興味深い。
迷いの袋小路に陥った時、自分を取り巻く環境が見えなくなった時にこそ「私らしく」ということが如何に大切かをこの歌は教えてくれる。どんな苦境に陥っても事故を見失うことだけは避けたいものである。多少誤魔化しでも「I'm all right」と思い込むことも大切と言えよう。
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