作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 岩瀬聡志
解説 真夜さんの9thアルバム『seasons』の5曲目に収録。一言で言うなら未練の曲である。
失った恋に思いを馳せる真夜ソングは珍しくなく、同アルバム収録曲でも「Destiny」が挙げられるがこの曲では失った「あなた」その人よりも、想い出に囚われている自分自身への問いかけがウェイトを占めている。
歌詞には時間的な流れがあり、最初に「それでもね また誰かを好きになれるのかな」、「いつかは忘れられる時が来るの?」と、失った「あなた」を忘れゆく自分が想像出来ずにいる。それは取りも直さず、折に触れて「あなたを探してしまう私がいる」という気持ちに裏打ちされた未練に他ならない。
ここでダンエモン的に興味深いのは、主人公が思い出す「あなた」との日々がクリスマスや海水浴ではなく、「白い息でふざけあった日」、「笑顔が大好き」、「そっと微笑んで」といった極日常的なものだということである。
何気ない日常にこそ、極普通に側に居られることにこそかけがえのない幸せがあることはデビュー曲である「TOMORROW」以来の伝統にして、近くは「Destiny」にも表れている。
だからこそ失った恋に対して苦しく思う気持ちも小さなものではあり得ないのだろう。
未練とは辛いものである。我が信仰する仏教では苦の根源は執着にあると説き、執着を捨てて無となることで苦から脱することが出来ると教えている。だが、苦は必ずしも不幸となるのだろうか?
執着に苦しまずに済むのも幸いなら、敢えて苦しんででも執着するものの為に生きるのも一つの幸いだろう。
「いつも強くいることが 忘れること」だと思ってた主人公は、「張り裂けそうでも ずっと あなたを想ってる」ことを選び、「二度と叶わない恋とわかってても」、「あなた」を想い続けることの幸せを悟ったのだろう。
だからこそ、すべてを昇華したときに「確かなものが 今 ここにある あなたへの想い ただひとつ…」と確信出来た思い出は悲しくも美しい、とダンエモンは捉える。
真夜の間へ戻る 平成二三(2011)年三月八日 最終更新