痛みを優しさに 苦しみを強さに

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 西垣哲二&岡本真夜

解説 真夜さんの9thアルバム『seasons』収録曲のトップバッター。恋人に語りかけるようにも取れ、親友に語りかけるようにも取れる収録曲が多い同アルバムのトップバッターに相応しい曲である。

 歌詞の趣旨は落ち込んでいる人に、最も身近な存在である自分自身を信じずして何も信じる事が出来ないことと、痛みや苦しみが次の幸福や自身の成長の糧となることを説いている。
 在り来たり、と言える歌詞かも知れないが、同時に最も大切なことであり、老若男女問わず、恋愛関係にも友人間にも師弟間にも違和感なく感じ入れる歌詞である。

 人間が自身の力を奮起させる根本を示してくれるのが「自分を信じてあげれずに 何を信じれる? 誰を幸せにできるんだろう」の歌詞であるが、最も身近な自分を信じられずして他人を信じられないのも道理で、別の見方をすれば、我が事が儘ならぬ身に他人の面倒を見る事が出来ない、と言い切られているようでもある。
 だが、直後にタイトルでもある「痛みを優しさに 苦しみを強さに 変えながら 歩いていこう」の歌詞が控えている訳で、これは痛みや苦しみを乗り越えて、その経験を他人の為に役立てられる人間になって欲しい、との願いが込められているようでもある。

別の観点から注目したい歌詞は「泣きたいときにでも 胸の奥にある希望を 忘れないで」である。すぐ後にほぼ同意である「つらいときこそ 追い続けるんだ 夢をずっと 見失わないように まっすぐな想いで」が控えているのだが、これは人間が奮起するエネルギー源として、上記に記した自分自身への信頼とともに。「夢」も大事であることを説いている、とダンエモンは受け止めている。
 確かにこれがなくてはダンエモンなど今まで20回は死んでいるだろう(自殺していた、という意味ではなく、生ける屍の様な人生を送っていた、という意味)。

 最後に注目したいのは「何も失わないで 手に入る夢も恋も愛もない 悲しいけど」の歌詞である。
 何かを失うことが次の何かを得る基となるのはよくあることで、決して否定出来ないのだが、仏教徒でありながら人一倍執着心の強いダンエモンには心苦しい歌詞である。
 理屈では、「命あるものはいつか死に、形あるものはいつか壊れる」という事も、仏教の「諸行無常 諸法無我 盛者必衰 会者定離」という教えも心得てはいるのだが、それでもダンエモンの周囲には失いたくないものが沢山ある。
 まあ逆に言えば、そこまで執着するからこそ、止むなくそれらを失う日にはそれらと引き換えに得るものをより大切にしたいと思うし、それは枯れては咲く花の姿に例えた物が、ラストの「寒い冬が過ぎ また花が咲くように きっと 笑えるから大丈夫 もう一度 信じて」なのだろう。
 改めてナイスな曲をトップに持ってきたのを感じ入る。


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平成二三(2011)年三月八日 最終更新