憂鬱は眠らない

作詞 大黒摩季 作曲 織田哲郎
解説 大黒摩季さんが作詞を担当して、作曲を担当した織田哲郎氏とともにデュエットした一曲。摩季さんが作詞して、織田氏が作曲した曲にはC/W曲の「とりあえず Drive My Car」、摩季ソングには「チョット」等があり、WINKの「咲き誇れ愛しさよ」があるが、いつかは摩季さんにも歌って欲しい(笑)。
 タイトル・歌詞ともに「憂鬱」と書いて「じょうねつ」と発音しているが、これは「憂鬱」の中にこそ次なる喜び・希望の始まりがあるとする主旨故にその様に発音していることがサビの「この世の憂いを笑い 新しい夢に火を点けようぜ」からもうかがえ、タイトルを「憂鬱は眠らない」としていることにも納得がいく。「眠らない」というより眠らせてはならない、という決意の表れなのだろう。
   人間は概して若き日に自らの能力に絶大の自信を持ち、人生を僅かしか消化してない故に夢を抱く。だが何の失敗も苦難もない順風満帆人生は極めて稀で、誰しもがどこかで一度ならず壁にぶち当たり、自らの至らなさ、力の及ばなさを思い知らされる。それを端的に表している歌詞が「俺の影なんて 踏まれもせずに消えてく」と言えるだろう。
 それに並行して「正直に生きる悪者に なれずにいた小心者」と打ちのめされて「憂鬱」の中で過去及び未来とどう向き合うかが、この歌の骨子なのだが、それが最も集約されている歌詞としてダンエモンは「やりたいことの現実に叩きのめされて 安らぎ選んだ過去(じぶん)と戦ってる 幸せだった思い出まで 悔やみたくないから… SHE GOT A SOUL」を取り上げたい。
 歌謡曲に限らず、常々「悔やみたくない」−後悔したくない、とは多くの人々が考えているだろう。だが、酷な事を言えば人間は過去を悔やむからこそ後悔したくない、という台詞を必要としている(本当に悔やんでいなければ、後悔したくないという台詞は生まれない)。だが大切なのを過去より未来、だからこそ過去を悔やまないものにするために今及び未来の努力がある。
 故に過去を全面否定しない「幸せだった思い出まで 悔やみたくないから…」とその後に続く「どんな夜にも朝はやってくるのさ やり直せない人生なんてどこにもない」という歌詞の流れが秀逸である。
 「憂鬱」なんて言葉が好きだという人は皆無に近いだろう。まして鬱症に悩む声が多い昨今、母も妹の彼氏も「鬱」に悩み、借金と無茶な業務責任に打ちのめされた過去(結局借金は家族の助けを借りて完済、業務責任からは逃亡した)から「鬱」に陥りかけた過去を持ち、そんな過去を未だに思い出しては悶絶するダンエモンは「憂鬱」なんて字は見たくもない!そしてだからこそ敢えて「憂鬱」「じょうねつ」と詠むこの歌の持つ意義を重んじる未来を築きたく思うのである。


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