十七歳の天使
解説 暗い…。余りにも暗過ぎる…。寂しさや別れをテーマにした暗い歌は真夜ソングにも時々見られるが、これより暗い歌はない…。5番目にこの歌を収録しているフォースアルバム『Hello』は勿論、全ての真夜ソングの中でも群を抜いて暗い…。
「1999Helloツアー」のビデオを見て、同ツアーでこの曲を弾き語りする真夜さんを見た時、「おいおいおい、本当にこの曲をライブでやったの?」と言いたくなった。くどいがそれぐらい暗いのだ…。
ストーリーを見ると二親に捨てられ、友達にも恵まれない孤児である主人公が世の中に絶望し、「十七歳」とい若さで死を選んだ、という身も蓋も、そして救いもないストーリーである。岡本真夜の歌の中には「この星空の彼方」の様に実際に人の死をきっかけに生まれた歌もある。この「十七歳の天使」も誰かの人生を伝聞したかのような内容なのだが、もしモデルがいるなら「この星空の彼方」以上に悲し過ぎる。
この曲の悲しさを際立たせているのはラストである。「彼女が選んだ"永遠の眠り"」とあることから自害したのは明らかなのだが、そんな彼女が神に望んだ幸せが「お金でもなくて 洋服でもなく 隣に父さんと母さんがいて あたたかいごはんと愛」というささやかなもので、それさえ叶わなかった境遇が涙を誘う。ささやかな日常の持つ大きな喜びを見事に歌い上げることの多い真夜ソングがこの曲では逆にその特色から大きな悲劇性を醸し出している。
勿論世の中には片親や孤児の状態でも、貧困にも負けることなく強く明るく生きている人間はごまんといる。「天使」=キリスト教の産物なら、自殺を禁じる教義から仏教徒のダンエモンでもこの結末には眉をひそめる。境遇に負けて自らの命を立つのは点ずれば他人の命をたっておいて境遇のせいにして減刑を求める犯罪者と共通するものがあるように思われてならない。
ちなみにこの曲が世に出た2年後の2000年の春、十七歳の少年による凶悪犯罪が続発し、岡本真夜自身「十七歳」という年齢にある種の重みを感じることを論述していた。
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