カデンツァ

         作詞 椎名恵 作曲 松田良 編曲 大友博輝
解説 椎名恵さんの16thアルバム『Tell me』のトリである10曲目に収録されている。タイトルである「カデンツァ」とはイタリア語で、意味は三省堂の「大辞林 第二版」によると、楽曲の終止部分の直前に、独唱者や独奏者が妙技を発揮するよう挿入された華麗な装飾的部分。元来は演奏者の即興演奏であったが、次第に作曲者が書くようになった。カデンツ。」とある。
 ダンエモンの音楽用語に対する無知ゆえか、果てまた歌詞に対する読解の甘さゆえか、イマイチタイトルと歌詞の関連が掴めずにいる。椎名ファンとしてまだまだだな(苦笑)。
 『Tell me』収録曲の中では寂しさ漂う曲で、同アルバム収録曲の中で同じ傾向を持つものは「Purple dawn」ぐらいで曲調的には些かトリに相応しくない気もする。これはやはりタイトルによるものだろう。
 歌詞の語るストーリーを見ると別れの曲である。それも別れそのものを描いている意味でも寂しさが一際強くなっている。実際、「二人過ごしたドアを閉める」「そっと見送るでしょう」「さよならと書いた手紙は すぐにでもやぶり捨ててね」とリアルタイムのものや、近々に訪れるであろうを未来(というほど遠いものではないが)を指した歌詞であることにもそれは見られる。
 注目すべきは主人公の迷いである。といっても別れるべきか思いとどまるべきかの迷いではない。「二人は元には戻れないから」という絶望的な歌詞が最後にあり、そういう意味での迷い出ないのは瞭然である。では何かというと自らが持っていた愛が何だったのか?という迷いである。
 それを端的に表す歌詞が「愛してた、愛されてた 私の愛はどっちだったの?」であろう。ある意味究極の寂しさだ。自慢じゃないが、道場主は過去の想い人に対して愛していたことを断言できる。だって、愛されはしなかったから道場主が愛していなければ話は……グエエエエェェェェエェェ!!(注:道場主のロメロ・スペシャルが炸裂中)……コホン、それはともかく、後になって愛に迷いがあるとはまるで自分の過去が虚像であったかのような寂しさが伴うということを云いたいのである。
 別の視点で見ると「笑った顔が好きだった 陽だまりみたいだったよ 私をいつも許す人 本当は苦しくて孤独だった」をダンエモンは挙げたい。特にラストは重要である。
 おそらく主人公が「あなた」を愛していたのは間違いなかろう。そして「あなた」は主人公の全てを受け入れてくれたのだろう。しかし「あなたと会って3度目の冬」を迎えて、主人公は「あなた」「やさしさ」「あなた」の人柄から来るものなのか、それとも主人公を愛しているからきたものかに自信が持てなくなったのだろう。
 最終的に主人公は本当に「あなた」を愛していたからこそ、愛されていることに自信を持てない「やさしさ」に自分を偽るような幸せに浸ることを自分で許せず、「行く先なんて決めてない」にも関わらず「二人で過ごしたドア」を出て「あなた」から去ることを決めたのだろう。
 殊に「振り返りたい、振り返らない 最後の愛を無駄にできない」の歌詞には、迷いなき意思を持つゆえの悲しみが満ちている。「荷物はこんなに軽いのに 思い出が心に重くなる」のも無理はない。過ぎ去った時が戻れないように「二人は元に戻れない」のは仕方のないことだが、それでもダンエモンは別れを経過することで本当に愛し合う意義をつかんだ二人が縁りを戻すことが願われてならない。

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最終更新 令和三(2021)年六月一一日