悲しみは空の彼方に

         作詞 麻生圭子 作曲 椎名恵 編曲 戸塚修
解説 椎名恵さんのフィフス・アルバム『Dolce〜ドルチェ〜』の5曲目に収録。失恋直後の再起を歌った作品である。
 まず注目したいのは気持ちの切り替え以上にすばやい行動の切り替えである。椎名ソングに限らず別れた直後を舞台とした曲は多いが、「まだ三日ね」と具体的な時間を示した曲は珍しい。
 そして僅かな時間しか経ていないにもかかわらず、「ならない電話は番号を変えたから」ときたもんだ。この気持ちはともかく、行動の切り替えの早さは、「あなたに微笑んで さよならができたのが」とある様にある程度の覚悟は固めていたのだろう。一方で「あなた」に関しては主人公が「あんなにも 辛そうな顔を見たの 初めて」の状態だったのだから。
 だが見落としてはならないのは、恋の終わりを先に決意したのはどちらかは不明ながら主人公も傷ついているということである。「あなたに微笑んで さよならができた」という事が「救い」はともかく「誇り」と繋げている点に幾ばくかの強がりを感じる。
 主人公の辛さを表している歌詞は「涙がこぼれても」「一日があまりにも長すぎて 気が遠くなる」を見れば充分だろう。人生に必要不可欠な転換の為に迷うことなく決断できることとその結果に辛さを感じるか否かは別問題である。
 最後に注目したいのは主人公が「あなた」との恋を決して悔いてもいなければ、別れに終わったとはいえそこから人生の糧を得ている点である。得るべきものを得たからこそ「誇り」という歌詞も出てくるし、「出逢えてよかったと 悲しみは空の彼方へ 送るだけ」と締めくくれるのだろう。
 世に恋は多けれど、それに比して結ばれるに至る恋は極少と言える。だが一番惨めなのは愛したこと、惚れた事、付き合ったことに「誇り」を持てない事ではあるまいか?道場主はかつてそんな恋の惨めさに一度陥り、椎名ソングによって死んでいた心を蘇生された。二度とは味わいたくない思いである。


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