勝手に決めないでよ

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 NISHIHIRA AKIRA
解説 摩季ソングマキシシングルの第4弾、アルバムでは『RHYTHM BLACK』の2番目に収録されている。摩季ソングにあっては珍しくかなり皮肉っぽい内容の歌詞である。
 背景を見てみると今まさに振られようとしている女が綺麗事でその幕引きを取り繕うとする男に対して思いの丈をぶつけている。
 それにしてもこの「あなた」「私」を思っていることを建て前に相手の為を並べ立てて随分様々な理由を出すものである。主人公は何度も「あなたがどんなに私を思ってくれてたとしても」という歌詞を繰り返しているが、「本気でそう思うなら捨てたりはしないはずでしょう?」というのが最大の本音だろう。
 話は逸れるが、道場主は今まで勤めてきた数々の会社で「御迷惑をお掛けしたくないから」という台詞を掲げて退職を申し出る人間を嫌になる程見てきた。勿論中途半端な気持ちで勤めるのは企業と個人の互いの為にならないのは確かで退職も一つの選択肢なのだが、単にその場の辛さや責任から逃れたい根性のなさを棚に上げて「御迷惑を…。」と綺麗事をホザク奴等は決して少なくなかった。この歌の「あなた」にも同様の見苦しさを感じるものがある。
 誤解を恐れずに論述するなら主人公が見せているのは「足掻き」である。「迷惑だなんて 思ったことないわ」「母性本能もある 結婚願望もある」「本気でそう思うなら捨てたりはしないはずでしょう?」「後悔しても遅いわよ」と様々な表現の歌詞に何とか相手言い分を認めまいとしての必死な姿が皮肉っぽい台詞の裏に見え隠れしている。
 だが勿論皮肉や足掻きばかりではない。最終的には相手のことを思っているのである。それを示すのが、「気負わなくてもいいよ ここまでもひとりで 生きてきたんだもの 平気…」「追いかけないわ 責めたりもしないわ 逃げたくなるでしょ?」と別れへの覚悟と下手な気遣いを無用とする意志が感じられる。そしてそこまで覚悟ができていながら相手の台詞に一つ一つ反論するのは真実が知りたい、との思いだろう。「どうしてもダメなの? それだけは教えて 気休めの理想より 確かな現実が欲しい」の歌詞にそれが如実に表れている。
 2003年12月18日現在、ダンエモンには一度付き合いながらその相手を捨てた経験はない(←そもそも付き合った経験がない)。下手な気遣いや言い訳・綺麗事は特にそれがバレバレだと却って相手を傷付ける、とは誰もが知りながらなかなかそう陥らないのは困難である。
 本音で生きることの大切さを歌う摩季ソングの特色がここにも表れている事に触れてこの解説を終わりたい。
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