風になれ

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 アルバム『POWER OF DREAMS』のトリである14曲目に収録されている曲であり、1996年に札幌で開催された祭典「ゆうあいピック」のテーマソングに使われた曲である。
 摩季の故郷である札幌の地縁か、この曲には札幌の地域限定のシングルが存在するのである!!ライブでも舞台が北海道ではよく歌われる一曲なのだが、ダンエモンはライブでは耳にしたことがない。アルバム『POWER OF DREAMS』収録曲は勿論、摩季ソングの中でも5本の指に入る好きな曲(ちなみにその5曲はそのときの気分で流動的)であるだけに、「風になれ」との縁の薄さに嘆く日々である(苦笑)。
 摩季ソングには「Go with the wind」「風に吹かれて」と風をテーマにした曲が他にもあるが、概して風は自由な心、自然の境地、引いては素直な心の比喩に使われる。この歌では「風」を「思いのままに生きる心」(「勝手気侭」とは全然違う)の比喩としている。
 この世は何かと世知辛いし、法的に自由であっても社会の不文律に自然と言いたいことやりたい事が妨げられることも少なくない(事の是非は別にして)。更に人間は悲しいことに様々な感情や思考を有するゆえに、様々な欲望を持つゆえに、自らの素直な心からの行動までも自縄自縛してしまう。そんな心の自由を空に漂う「風」になぞらえ、託す気持ちを歌ったのが「風になれ」である。
 ダンエモンがこの歌が好きなのは、この歌に歌われる「あなた」に強い憧れを感じ、この歌の主人公がそれを慕う気持ちに心打たれるからである。
 「何も望まない」「とてもキレイ」「あなた」と些かその存在は抽象的ではあるが、抽象的な希望しか見えない日常に「道」「形」を求める主人公が思う気持ち、それだけは真実である、と歌い上げる歌詞が主人公にとって如何に偉大な存在であるかを聴き手に告げてくれる。
 そしてこの歌にはダンエモンが全ての摩季ソングの歌詞の中で二番目に好む歌詞がある。それは「あなたに伝えたいことたくさんたくさんあるのに 言葉や常識に邪魔をされて 上手く言えないから」である。
 人の心の中にある素直な気持ちは筆舌では表せ得ないところも多く、また、言葉にするがゆえに隠れてしまうものもある。「上手く言えない」には論理的に不可能な面もあれば、咽喉まで出かかっても、その一言の為に、相手に嫌われてしまうのではと言う気持ちや、自分が自分であることに固執して言いそびれてしまう、正に「常識に邪魔をされて」言えなくされてしまう面とがある。
 心をそのまま伝えられないが為に誤解や偏見を生み、愛情や友情を損なってしまっているパターンは恋愛に限らず、親子・友人・師弟間においても有り得ることである。誰もが漠然と抱きつつなかなか思うつかなかった気持ちを、物の見事に歌い上げている。素晴らしい!!
 贔屓にしている歌だけに褒めちぎってしまったが、上記に一切の偽りはない。この歌の歌詞ではないがダンエモンの思うままの感じるままの心である。アルバム『POWER OF DREAMS』のトリを務めるのに相応しい曲である。大黒摩季にはこの歌のような気持ちを何時何時までも持ちつづけて作詞・作曲・歌唱に頑張って欲しいことを切に願うものである。

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