風をつかまえて
作詞 椎名恵 作曲 池毅 編曲 見良津健雄
解説 椎名恵さんの12thアルバム『Cherish』の2曲目に収録。「THE WIND」や「風物語」に見られる様に椎名ソングにしばしば見られる「風」を冠した曲の一つ。
「風」を題材にした歌には何物にも遮られずに自由の象徴と捉えた物が多く、この曲もご多分に漏れないのだが、殊にこの曲はそんな自由への道行きを聞き手に呼びかけているような流れが特徴的である。「風をつかまえ」るのは「風」に乗って、自由な空を飛ぶ為なのだ。
明らかに聞き手に呼びかけている部位として、「悩んでるだけじゃいけないと思わないかい?」や「あの空、飛びたいと思わないかい?」といった、勧誘形を交えた疑問文が挙げられるが、そこに内包された物としてダンエモンが注目したいのは「みんな一つぐらいは 深い傷を隠しているよ」である。
少し話は逸れるが、人類は遥かな古代から風の如く、鳥の如く空を飛ぶ事に憧れてきた。そしてそれは飛行機を初めとする航空機器が発達した現代でも変らない。何故か?それは自由への憧れにある。重力の束縛を脱して大空は舞う鳥の姿にそれを感じるのだ。
では何故自由に憧れるのか?それは自由でない面があるからだ。そんな自由への妨げを比喩した物が「深い傷」であり、それは「みんな一つぐらい」持っている物で、誰しもがそんな傷から解放されたいと念じている。そしてその解放された姿を「Wind is blowing」に重ねて、憧れるのだろう。
勿論物理的な意味において人間は風にも鳥にもなれず、航空機器を使わずして空は飛べない。だが飛翔力はなくとも人間には想像力がある。それを端的に表した歌詞が「翼なんかなくても 瞳閉じて心を飛ばそう」であろう。
最初、タイトルを聞いた時、ダンエモンは自由の象徴である「風」を何故「つかまえ」るのか分からなかった。「風」の魅力を阻害する様に感じられたのだ。だがこの疑問は「過去から未来へ飛び立とう」を聴いて氷解した。「風に乗」るためには、「風」に止まってもらわないといけないから、「つかまえ」る必要があると言う訳だ(笑)。
「風」をテーマにした歌には自由と安らぎに満ちたのんびりした者が多いのだが、力強さに溢れた「THE WIND」と軽快さが魅力なこの「風をつかまえて」は「風」にまつわる個性的椎名ソングとして長く記憶に留めたいものである。
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