君が涙

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 建部聡志
解説 岡本真夜さんの6thマキシシングル「美しき人」のC/W曲で、9 thアルバム『再会〜君に綴る〜』の5曲目に収録。歌詞の状況から推測するに、主人公と「君」の間には幾ばくかの距離感が窺える。
 恐らく、この曲の主人公は何年にもわたって「君」を想い続けているのだろう。「またひとつ 季節は通り過ぎて」「いつの日か」と言った歌詞がそれなりの時間の長さと、それが持つ重みを巧みに表している。
 「かけたい言葉はたくさん でもそれを口にしたら」「苦しい時こそ そばにいてあげられたら… 力になれない自分が 今日も悔しい」と言った歌詞からは側にいて慰めたり、優しくしたりできないもどかしさが感じられる訳だが、まずは第一義として「君を想う」という事を何より重んじている所に注目したい。
 「いない時も 君が寝てる時も 気にしてるよ」と恐らくは届かない所から心で呼びかけつつ、「"見られたくなかった涙" そんな気がしたから 私はこのまま このままでいるね」という歌詞からは主人公が必ずしも変化を求めているとは限らない所が興味深い。勿論変化を求めないのは「君」を想えばこそである。なかなか出来る事ではない。
 そう言った意味で最も注目したい歌詞が、「何も変らない日々から逃げずにいよう」である。正直、ダンエモンは初めて聞いた時、おや?と思った。涙に暮れている日常を繰り返せ、とも取られかねないこの歌詞は一聞しただけでは前向きさを感じられない。だが、変らない日常からの脱却を訴える歌の方が遥かに多い中で、「"今"を続けたその先に 未来があるから」としたのは今まで気付いていなかった何かを気付かされた気がした。
 ともすれば人は結果ばかりに、言いかえれば目先に気が行ってしまう。それが良くない事であるのは誰もが認識しながら、結局は結果や目先ばかりを重視してしまうのはよくある。その理由は最終的には結果を求めるからであろう。そしてそのために地道な日々の努力が大切である事を知りながら、変化を見せないとついつい軽視してしまう。だが結果を為すのはまさに「何も変らない日々」の地道な努力の中にある。だがその見えざる成果に気付かず、中途にして放棄する事は少なくない。取りも直さず「何も変らない日々から逃げ」てしまうからだろう。
 大切な事に改めて気付かせてくれたこの曲に感謝しつつ、「いつの日か 微笑」む為にも「何も変らない日々から逃げ」ない努力を改めて心掛けたい。
 

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