君遥か

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 西垣哲二&岡本真夜

解説 岡本真夜さんの8thアルバム『Soul Love』にトップバッターで収録。歌詞の中に「星月夜 願ひ」「悲しきかな」「人伝の心変はり」「待人 来らず」と、言い回しや仮名使いに古語的な表現が散見されるが、これが最近の真夜さんの凝りである事をダンエモンは平成19(2007)年3月16日のライブで真夜さんの口から聞いた。

 「君」という二人称や歌詞からは主人公の性別が断じ難いが、別れを惜しむ曲である事は明白で、「いっそ 冷めた顔で一言 突き放して」という歌詞から恐らく「君」は主人公に対して言葉を選ぶような振り方をしたのだろう。
 だが、中途半端な情けが長期に渡ってふられた側を苦しめる事もよくある話で、主人公が「心変はり」してしまった筈の、「君」「待人」として、(恐らくは二人が待ち合わせの場所にしたと思われる)「桜の花」が咲く場所で来ない筈の、"もう君じゃないんだ"って感じてる以前とは変わってしまった「君」を想って涙に暮れるのだろう。

 真夜ソングには「泣けちゃうほど切ないけど」「ANNIVERSARY」の様に「桜」の出て来る歌が他にもあり、それらは概して想い人との距離はあっても良好な関係を持っている物が多いのだが、この「君遥か」は例外的存在と言えなくもないが、それもまた味であると言えよう。

 戻らぬ想い人を想い、涙に暮れる歌詞はともすれば女々しく映るかもしれないが、ダンエモンは力強い曲調とは裏腹なその女々しさを敢えて買いたい。
 主人公が今尚「君」を想っている事は確かで、「心変はり」されたとはいえ、死に別れたわけじゃなく、「今は信じたくない」と思ってしまう姿が見える(または伝聞できる)距離にいることも覗える。
 「心慌し 優しさは媚薬 かすかな光を 別れ路にて 待ち嘆く」……いっそ冷たくされた方が忘れる事ができて、それがお互いの為である失恋も確かにこの世にはある。だが別れに際してあっさり相手を忘れるような別れはそんな重みのない恋をしたのか?との自己嫌悪が残らないだろうか?
 本当に絶望的な何かを突き付けられるまで「かすかな光」「桜の花 ヒラヒラ揺れて」散ってしまうような僅かな時の中にも追い続けたい、それほど強い想いをもって恋をしたいし、最悪別れを告げる側に回るならそんな強い想いを断ち切るほどの決意を持つべき、とこの曲を聴く度に想いを強くするダンエモンであった。


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平成二三(2011)年三月八日 最終更新